長崎県知事選 母親らの声「子育て支援 具体策は?」 医療費財源に不安、孤立解消へ注文

子育て世帯の孤立化は新型コロナ禍で一層進んでいるとされ、社会とつながる上で支援サイトやオンライン交流会を頼りにする親は少なくない(写真はイメージ)

 長崎県知事選(20日投開票)の立候補者3人はいずれも、子育てに優しいまちづくりを訴えているが、幼い子どもの親たちはどのように受け止めているのだろうか。子育て支援団体が10日に開いたオンライン交流会で、生の声を聞いた。
 交流会は佐世保市の団体「親子いこいの広場もくもく」などが主催し、5人の母親が参加した。
 1人の女性が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」。人口維持には「2.07」が必要とされる。全国各地で人口減少が進む中、現職の中村法道候補(71)=3期目=は全国4位に当たる本県の1.64(2020年概数)を実績として強調。新人で医師の大石賢吾候補(39)は2.07を認識しつつ、県民に分かりやすいようにと「2を目指す」と訴える。
 2歳と4歳の子を持つ長崎市の助産師、杉村優子さん(37)は、いずれの候補にも「具体的には子育てをどう支援してくれるの?」と首をかしげる。
 杉村さんが以前住んでいた福岡県内の町には、誰でも無料で利用できる「福祉巡回バス」があった。車がなくても子どもと一緒に出かける際に不便を感じることはなく、町内の「子育て支援センター」前にも停留所があったという。
 3年前に地元の長崎市周辺部に戻って生活しているが、交通手段の不便を感じている。「市中心部は路面電車や路線バスの本数が多いが、周辺部はそうではない。もっと子育てに優しいまちになってほしい」と願う。
 知事選では子どもの医療費でも論戦が展開されている。大石候補は助成適用の18歳への引き上げ、新人で食品輸入販売会社社長の宮沢由彦候補(54)は高校生までの無償化を主張する。県によると、助成の適用年齢の上限は各市町で異なり、乳幼児の助成に対しては県が半額を拠出する。
 1歳と4歳の子どもを育てる佐世保市の主婦、馬場周子さん(40)は医療費負担の軽減を望むが、「将来、大人になった子どもたちが、増加した負担分を背負うことにはならないか」と財源を不安視する。
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 オンライン交流会を主催した団体「もくもく」代表の数山有里さん(41)は16年、孤立化に悩む子育て世帯の交流の場として同団体を設立。新型コロナウイルスの感染拡大で人と人との接触が制限される中、一層孤立化が進んでいるとされ、数山さんは週1回、交流会を開いている。
 子どもの預かり支援をする「ファミリーサポートセンター」は県内14市町が設置している。運営は市町直営のほか、社会福祉協議会や民間団体に委託。あるセンターの責任者は「転勤族や外国人など子育て家庭の形は多様化しており、さまざまな対応が求められ、中には困難なケースもある」という。このため「センター間のネットワークがあれば、支援方法の選択肢も広がる」として県主導の連携体制づくりを求める。「そうなれば、お母さんたちにとって『いろんな人に支えられている』という安心感につながるのではないか」と話している。

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