きのう「解除」

 西日本では2月の半ば頃、地上に頭をのぞかせるフキノトウは「春の使者」と呼ばれ、これからもうしばらく柔らかい花芽を付ける。天ぷらで、炒め物で、春の風味を味わった人もいるだろう▲つらい冬を耐えたあと、春の便りを届けることから、フキノトウには「待望」の花言葉がある。この冬、長い辛抱の時を過ごした人には、その花言葉がぴったりくるだろう。新型コロナのまん延を防ぐ重点措置が、きのういっぱいで本県でも解除された▲今回の措置は45日間と長く、昨夏の措置の3倍近くに及ぶ。そのぶん、営業時間を短くした飲食店や、関係する業種への影響もじわじわと、長く続いた▲街では多くの飲食店の店先に「休業中」の張り紙を見た。客足がどれくらい戻るか見通せないが、また店に明かりがともると思えば胸にかすかな春風が吹く▲一方で、感染者数はぐんと減ったわけではなく、学校、保育所、福祉施設へと感染の場も広がっている。このひと月、小学校のクラスで毎日、誰かが休んでいると教師の一人に聞いた。混乱が現在進行形の現場もある▲安心と期待と不安が入り交じる「解除」は、フキノトウの風味のように、いくらか胸にほろ苦い。ある程度の感染の広がりは受け入れながら社会、経済を動かしていく-ウィズコロナの春よ来い。(徹)

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