結婚話が進まず独身のプランも考え始めた38歳実家暮らし女性。今から何を準備すべき?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、38歳派遣社員、実家暮らしの女性。彼氏の体調不良で結婚話が進まず、結婚しないパターンのマネープランも考えなければならないかもしれないと思い始めた相談者。ただ、相談者は特性的に、仕事があまり得意ではないとのこと。今から何をすべきでしょうか? FPの高山一惠氏がお答えします。


38歳、派遣社員、独身実家暮らしです。彼氏は病気で1年以上入退院しており、結婚の話が進みません。恋愛相談ではないので詳細は省きますが、こんな状況なので老後が不安です。

新卒の2年半は正社員でしたが、それ以降は非正規雇用でいくつかの職場を経験しました。事務職をしていますが、適正が未だ分からず、言い訳になりますが何かしらの発達障害があるのか、頭の回転や飲み込みが悪く注意力も散漫でいたたまれない気持ちになるので仕事が好きではありません。

楽しく働ければ最高ですが、お金にできそうな才能も思い浮かばず。結婚したら専業主婦か、パートになりたいですが、結婚しないパターンも想定しなくてはいけないのかなと投稿しました。小遣いは少ないと思いますが、コロナが終わればもう少し使ってしまいそうです。

今は月に10万円を積立しています。「収入–支出」では足りてないので、貯蓄を切り崩しています。貯蓄が200万円くらいになるか、株価が上がりすぎと感じるか、単純にキツくなってきたら積立額は減額しようかなと思っています。

両親は、父はパート勤務で、たぶん手取り6万円くらい。母は専業主婦です(働いていたこともある)。両親とも、年金と父のパート収入と、私の渡している生活費3万円で暮らしています。周囲と比べれば割と年金はあるほうかと思いますが、母も趣味を謳歌しているので支出も多いと推測します。住宅ローンも退職金で完済しているので借金はないそうですが、貯金もないです。両親とも今のところは介護の必要はなく、体力もありますが、 父は高血圧、母は甲状腺を摘出しているので一生飲まないといけない薬があったり、通院は欠かせません。

【相談者プロフィール】

・女性、38歳、派遣社員、独身

・お住まいの都道府県:東北地方

・住居の形態:親の家で同居

・毎月の世帯の手取り金額:14万7,000円

・ボーナス:なし

・毎月の世帯の支出の目安:7万円(内訳は月割り計算です)

【毎月の支出の内訳】

・住居費:3万円(食費・水道光熱費など親に生活費として渡している)

・通信費:0~1,000円(格安SIM利用)

・車両費:1万800円(ガソリン5,000円、車税600円、任意保険1,900円、車検3,300円)

・お小遣い:1万8,200円(趣味交際・飲食費6,000円、美容院3,000円、化粧・生活用品3,000円、衣服6,200円)

・その他:1万円(医療費2,600円、市県民税7,400円)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:0円

・毎月の投資額:10万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:0円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):普通預金357万円

・現在の投資総額:投資信託97 万円(他に、払い済みドル建て保険が3種で合計400万入金しているが、今解約すると大きく元金割れなので60歳位になったら解約を順次考えようと思っている。また、親に退職金でプレゼントされた養老保険が約2年後に満期で135万円貰える)

・現在の負債総額:0円

高山:ご相談ありがとうございます。現在お付き合いされている彼とは、なかなか結婚話も進まないとのこと。将来のことを考えると不安になりますよね。結婚するかしないかはお相手のお気持ちもあると思いますので、ひとまず、一生シングルということを仮定してマネープランを立てておくと安心です。今回は、シングル女性がマネープランを立てる上での注意点なども踏まえてお話します。

老後どれくらいのお金が必要かを把握することから!

現在は、ご両親と一緒に暮らしているということもあり、しばらくシングルの状態が続いたとしても当面の生活はそんなに心配しなくても大丈夫そうですね。ご相談者さんの場合、仮に一生シングルで暮らすとなると、一番心配なのは老後のお金なのではないでしょうか。

現在は65歳から年金を受給するのが一般的です。ですから基本的には、65歳までにどれくらいの金額を貯めておけばよいのかを考えることが大切です。

とはいえ、65歳までに貯めておく目安の金額は、厚生年金に加入しているか否かや現役時代の年収に大きく関わってきます。今回は、2021年の総務省家計調査報告を基に、65歳以上の単身世帯の収入、支出の状況を参考に考えていきましょう。

2021年の総務省家計調査報告によると、65歳以上の高齢単身世帯の実収入は13万5,345円、支出は14万4,747円となっており、約9,400円、支出が収入を上回っています。

参考までにこちらの1カ月の支出は、衣食住の基本生活、かつ持ち家を前提としています。ご相談者さんがシングルで暮らす場合、ご両親の持ち家に住み続けると仮定します。

相談者の老後資金の目安は?

これらを踏まえ、90歳まで生きるとすると、
65歳~90歳の生活費:9,400円×12カ月×25年=約282万円
が不足するということになります。

ただし、ご相談者さんの場合、あまり仕事が好きではないとのこと。仮に60歳までしか仕事をしないという場合には、60歳から65歳までの間は、無年金となるので、その間の生活費を確保しておく必要があります。

無年金の生活費は、仮に生活費が15万円かかるとすると、900万円を準備しておく必要があります。65歳からの生活費と合計すると、約1,200万円程度の貯蓄が必要になることに。当然のことながら、60歳よりも前に仕事をやめたり、派遣社員からパートなどに働き方を変えたりした場合には、年金の金額も減りますし、もっと多くの金額を準備する必要があります。

長生きに備えて、医療・介護費用も準備!

また、シングルで生きるとなると、備えておきたいのが医療費や介護費用です。というのも、高齢になると、病気になったり、介護が必要になったりする可能性が高まってくるからです。

特に準備したいのは介護費用です。長生き時代の今、85歳以上の高齢者の約6割が要支援、要介護状態になっています。

では、介護費用はどれくらいかかるのでしょうか? 例えば、在宅で介護を受けるという場合、訪問介護やデイサービス、福祉用具などの介護保険サービスの利用にかかる費用と医療費やおむつ代などの介護サービス以外の費用があります。かかる費用は要介護度や介護期間により異なりますが、公益財団法人生命保険文化センター(2021年)のデータを参考に見てみましょう。

在宅の場合、住宅改修や介護用ベッドの購入にかかった一時的な費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、74万円、月々の費用(自己負担分)は、8万3,000円、介護期間は61.1カ月となっています。単純に計算すると、約507万円かかることになります。

老人ホームや認知症のことも考えておこう

また、シングルで重度の介護状態になってしまった場合には、自分では何もできないため、老人ホームに入るという選択をする必要がでてきます。一口に老人ホームといっても、地方公共団体や社会福祉法人が運営する「公的老人ホーム」と民間企業が運営する「民間老人ホーム」があり、どちらに入居するのかによって費用も全く違います。一般的には、公的老人ホームは費用が安いので人気がありなかなか入居できません。民間老人ホームに入るとなると、入居時の一時金の費用として500〜1,000万円、月額の費用は毎月25〜30万円程度かかります。

さらに、認知症になってしまった場合には、財産を誰に任せるか、自分の死んだ後の整理をどうするかなどの問題が発生します。今回は、詳細は省きますが、シングルの場合は特に、認知症になってしまった場合の対策についても考えておく必要があります。

ちなみに、もし、ご両親が介護状態になってしまったという場合、ご両親と同居しているご相談者さんにも少なからず影響があるでしょう。ご両親の状況から見ると、ご相談者さんに経済的な負担がかかることはあまりなさそうですが、介護が長引けばご相談者さんが負担する可能性もでてくるかもしれません。これを機会に介護保険で受けられるサービスやそれに伴う費用、そして費用を軽減する制度を調べておくのもよいと思います。

老後資金・介護費用どう貯める?

では、老後資金、介護費用をどう貯めるかについてですが、既にご相談者さんは、貯蓄や投資を頑張っていらっしゃるご様子。上記で見てきた試算によると、基本的な老後の不足金額が約282万円、介護費用は507万円、ここに医療費や+アルファを加味すると、最低でも1,000万円程度準備したいところですね。

仮に現在の状況で65歳まで働き続けるとした場合は、貯蓄に加えて、ドル建ての終身保険や養老保険の満期金で基本的な老後費用、介護費用は準備できそうですね。

とはいえ、早期に仕事を辞めたり、働き方を変えたりする場合や医療費、その他、プラスアルファの費用なども考えると、税制優遇の恩恵を受けながら中長期的に安定的にお金を増やしていける可能性が高いiDeCoやつみたてNISAなどの制度を利用して、コツコツお金を増やしていくと安心です。

貯蓄の取り崩しと家計の見直しで毎月5万を積立投資へ

現在、毎月10万円投資しているようですが、貯蓄から取り崩しているとのことなので、長期的に毎月10万円を投資するのは難しいですよね。貯蓄からの取り崩しを調整したり、家計を見直したりするなどして、仮に毎月5万円コンスタントに積立投資をしたとします。ご相談者さんは、現在38歳とのこと。60歳までの22年間、毎月5万円を利回り4%で運用することができれば、約2,100万円になります。

金融庁の資産運用シミュレーションで、毎月の積立金額、想定利回り、積立期間を入力すると、将来どれくらいの資産が築けるかがわかります。

何歳までどんな形態で仕事をするのかなどを考えて、今回アドバイスさせていただいたことを参考にしながら、ぜひ試算してみてください。今からどれくらい準備したらよいのかが見えてくるのではないかと思います。

今回は、生涯シングルの場合を想定したマネープランのアドバイスをさせていただきましたが、お相手の方と将来のことをしっかり話合う機会が設けられるとよいですね。この度は、ご相談ありがとうございました。少しでもご参考になれば幸いです。

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