2人の子持ち41歳シングルマザー「家賃に消える養育費。いっそのこと家を購入すべき?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、2人の子どもと暮らす41歳のシングルマザー。現在養育費とほぼ同額の家賃を支払っている相談者。「どうせ家賃に消えてしまうなら」と、住宅の購入を考えていますが、住宅を購入しても教育費と老後資金は確保できるでしょうか? FPの三澤恭子氏がお答えします。


10歳、7歳の子どもがいるシングルマザーの会社員です。このまま賃貸でいくべきか、家を購入すべきか悩んでいます。

現在、養育費6万円をもらっており、家賃がちょうど6万円です。2,500万程度の住宅を購入し、子どもの教育資金と老後資金を確保できるでしょうか。

現金預金は2,000万円あります。ボーナスで年払の保険料を50万円払っています。学資保険・終身保険で700万円を払済。

【相談者】

・女性、41歳、会社員 ・子ども:10歳、7歳

・住居の形態:賃貸(関東地方)

・毎月の世帯の手取り金額:34万円(養育費6万円)

・年間の世帯の手取りボーナス額:110万円

・毎月の世帯の支出の目安:27万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:6万5,000円

・食費:4万5,000円

・水道光熱費:2万円

・教育費:5万円

・保険料:2万円

・通信費:6,000円

・車両費:3万円

・お小遣い:2万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:7万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:60万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):2,000万円

・現在の投資総額:50万円

・現在の負債総額:60万円

・学資保険・終身保険:700万円払済

三澤:ご相談ありがとうございます。ファイナンシャルプランナーの三澤恭子です。養育費を貰っても家賃に消えてしまうといった心境でしょうか。仕事に子育てに頑張っているシングルマザーの相談者様は、お子さん2人の教育費やその後のご自身の老後を考えると、このまま賃貸か住宅購入に踏み切るか迷われるのも無理もないことです。安心して購入できるようプランを立てていきましょう。

現状の収支による貯蓄額を推測する

まずは現状収支から将来の貯蓄額を推測してみましょう。

【前提条件】
養育費6万円(3万円/1人)は、子ども2人が20歳になるまでとする。退職は65歳としボーナスからの貯蓄も同額できるものとする。

●毎月の貯蓄から
上の子20歳まで7万円×120カ月=840万円
その後、下の子20歳まで4万円×36カ月=144万円

●ボーナスから
相談者様65歳まで60万円×24年=1,440万円

●児童手当
上の子1万円×60カ月(10~15歳)=60万円
下の子1万円×96カ月(7~15歳)=96万円

●現在の貯蓄額2,000万円からつみたてNISAへ年間40万円×20年間振り替えを行う。(平均3%で運用できたとしたら270万円ほどの運用益を手にすることもできそうです)

これらの試算をもとに、まずは教育資金の確保から考えていきます。

大学の費用は、自宅通学か一人暮らしかで270万円の違い

現在の教育費の支出から教育熱心な様子が伺えますが、高校までは公立とし家計からやりくりするものとします。確保したい教育資金は大学の学費とし、「自宅通学」と「一人暮らし」の場合でみていきましょう。

それぞれの調査結果から、私立理系の一人暮らしとした場合で1,050万円、同じく自宅通学であれば780万円となりました。

前項の貯蓄予測より、毎月の積立て984万円、児童手当156万円、学資および終身保険の700万円をすべて子ども2人の教育資金に充てると1,840万円となり、一人当たり900万円が確保できます。

教育費は親がいくらまで準備すると金額を決め、それ以上かかる分はお子さん本人が奨学金を利用することも視野にいれ、勉強にスポーツに励むような教育方針をとっていくのも良いと感じます。

では、次に住宅購入を考えてみましょう。

住宅購入のメリットは?

住宅購入のメリットの一つとして、「母親にもしものことがあったとき子どもに家を残せる」ということがあります。

それは、住宅ローンを利用した場合、多くの金融機関が借入れの条件としている「団体信用生命保険」へ加入することで契約者である母親が死亡・高度障害となった場合、保険金が下りて残りの住宅ローンの支払いがなくなるからです。

養育費を除く手取り収入の4分の1ほどを占める住居費の負担に、「このまま賃貸に住み続けてもいいものか」と悩むところですよね。2,500万円程度の住宅を購入しても教育費と老後資金の確保ができるかどうか試算してみましょう。

今と変わらない住居費の返済プランでいくと完済は71歳

住宅ローンの一般的な最長借入期間である35年で組んだ場合、ローンの完済年齢は76歳となり年金暮らしとなってからも返済が続くことになります。
そこで、現在の住宅費と変わりなく65歳まで(相談者様の退職年齢と仮定)に支払いが終了するようにプランを組んでみました。

【前提条件】
・民間住宅ローンを利用(りそな銀行3月金利を参照)
・借入金額2,000万円、頭金500万円、諸費用100万円
・全期間固定金利0.995% 返済期間30年として試算
・65歳時に残金を一括繰り上げ返済の予定

2,000万円の住宅ローンを組んだ場合、1カ月の返済金額は6万4,821円となります。ローンの完済は71歳ですので、年金からの支払いをなくすためには65歳時の残金450万円を一括返済できるよう準備する必要があります。

現在の貯金総額2,000万円から頭金と諸費用へ合計600万円を充当します。残りの1,400万円から老後資金としてつみたてNISAに800万円を振り替えていき、生活防衛費170万円を除いた残り430万円は最終的には老後の資金に充当していくものと考えます。

繰り上げ返済はボーナスを積立てて

退職時に繰り上げ返済する原資はボーナスの積立てから準備します。現在のまま60万円を65歳まで変わらず積み立てることができれば1,440万円ですので、450万円を返済に充てても1,000万円は老後資金に回すことができますよね。とはいえ、ボーナスには変動がつきもの。住居の維持費、生活費の上昇もあり現状と同じように貯蓄に回すことができないかもしれません。

住宅ローンを組むことで、保障内容によっては年払いの保険料を安くすることもできそうです。支出の見直しを行い、少なくとも退職までにボーナスから950万円ほど貯めることを目指しましょう。そうすれば、住宅ローンの一括返済ならびに老後資金2,000万円を確保することも夢ではありません。

完璧は求めず、できる範囲で

老後資金は相談者様の公的年金や生活水準をどこに置くかで準備する金額も変わってきます。参考数値としていただければ幸いです。

小学生2人のお子さんを社会人とさせるまでには、まだまだ時間がかかります。何よりも相談者様が健康で長く収入を得られることが大切です。あれもこれもと完璧は求めず、予算を決めてその範囲でできるライフプランを描いてみてください。お庭から笑い声が聞こえるような素敵なマイホームと出会えることを願っています。

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