〝一刻も早く平和を〟 ウクライナ出身・ヴァレリさん 知人の支援受け親族日本へ 長崎 社交ダンス講師 佐世保でチャリティーレッスン

ウクライナから福岡県へ避難してきた家族と食卓を囲むヴァレリさん(右)。中央はサールヤーさん(サールヤーさん提供)

 福岡県を拠点に、長崎県佐世保市内でも社交ダンスの講師をしているウクライナ人がいる。首都キーウ(キエフ)近く出身のヒフルハ・ヴァレリさん(27)。ヴァレリさんはロシアのウクライナ侵攻後、知人で佐世保市の会社員、サールヤー敏枝さん(54)の協力も得て祖国の母親らを福岡県へ避難させた。一方で兄とその親族は今もウクライナに残っている。ヴァレリさんは兄たちの身を案じ、一刻も早く平和が訪れるよう願っている。
 ヴァレリさんは子どものころから社交ダンスに取り組み、2015年に初来日した。佐世保市のハウステンボス(HTB)でダンスショーの舞台に立ち、観客だったサールヤーさんと知り合った。サールヤーさんのサポートなどを受け、18年から福岡県でダンス講師として活動を始め、19年からは佐世保市でも月2回教室を開いている。

社交ダンスの指導に当たるヴァレリさん=佐世保市大和町

 ウクライナ侵攻による故郷の惨状は兄から知らされた。散歩した場所や古い建物などは、どこもかしこも破壊された。母親の暮らすアパートから100メートルほど離れた場所では複数の爆弾が爆発したという。「信じられないことが起きた。ウクライナ人とロシア人は家族みたいなのに」。母と祖母、兄の妻とその子どもたちは侵攻後すぐにルーマニア近くへ避難した。
 出国するか国に留まるか-。母親たちにはためらいもあったが最終的に出国を決断。タクシーと徒歩で国境を越え、ヴァレリさんを頼って、ようやく日本へたどり着いたのは3月18日だった。
 サールヤーさんは避難手続きを手助けするとともに、支援のための募金活動も展開。佐世保市内でチャリティー社交ダンスレッスンも開催してきた。自身もかつて米国で数年間暮らしたことがあり、異国で生活する大変さは身に染みている。「私が米国生活で助けてもらった恩を別の形で返したくて」
 避難はしたが、考えなければならないことはたくさんある。言葉の壁、就労先。日本での生活が長期になる場合、子どもの学校は-。一方で母親らは祖国へ帰れることを信じている。「支援だけでなく、帰る日のための準備もしておきたい。(帰国を)信じて準備することは希望にもなると思う」。サールヤーさんはそう語る。
 ヴァレリさんの兄は元警察官で戦闘のために召集されたという。「自分は兄にウクライナから避難してほしい。でも兄はそうではない。国を守りたいんだ」。そしてヴァレリさんはこう続けた。「今すぐ戦闘、攻撃がなくなり以前のように暮らせることを願っている。ウクライナもロシアのことも愛しているから」
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 次回のチャリティー社交ダンスレッスンは10日午後2、4時から同市大和町のスタジオKO-ON。申し込みはvalera2019@yahoo.co.jp。

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