「効率よく貯金を増やしたい」余剰金を全額投資に回す3人家族の危うい家計

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、45歳会社員の男性。妻と娘と3人暮らしの相談者。少しでも効率よくお金を貯めたいので、毎月の余剰金を全て、iDeCo、つみたてNISA、アクティブファンドに投資して大丈夫か知りたいとのこと。相談者の家計の場合はどうなのでしょうか? FPの横山光昭氏がお答えします。


2年がかりで取り組む会社のあるプロジェクトに抜擢され、昨年から手取り収入が約15万円増えました。現在、妻(40歳)と娘(小3)と暮らしていますが、生活費は増えないように気を付け、収入がアップする前の40万円ほどを維持しています。

手取りが約65万円、生活費が約40万円なので、差額が25万円ほど出ています。あと1年ほどこの状況が続くので、余剰金はすべて投資に回していますが、これで大丈夫でしょうか。

娘には、中学を受験し、その後私立大学にエスカレーター式に進んでほしいと思っているので、もう少ししたら塾通いも始まります。支出が増えることがすでに分かっているので、金利が低く、なかなか増えない貯金をしていくよりも、投資で増やしていくべきではないかと思ったのです。

現在、貯金はしばらく増えていませんが約70万円。投資はiDeCo、つみたてNISAはもちろんのこと、少し増え方がよさそうなアクティブファンドにも積み立てています。今後のお金の貯め方について、もっと効率のよい方法はあるでしょうか。

【相談者プロフィール】

・男性、45歳、会社員 ・妻:40歳、専業主婦 ・娘:公立小学校3年生

・手取り収入:夫月収64万8,000円、年間ボーナス約150万円

・貯金額:約70万円、iDeCo約51万円、つみたてNISA約66万円

・総支出額:40万1,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費(ローン):11万円

・食費(外食含む):7万3,000円

・水道光熱費:1万9,000円

・通信費(スマホ3台、ネット):1万5,000円

・生命保険料:2万3,000円

・日用品代:1万5,000円

・医療費:2,000円

・教育費(給食費・習い事):3万1,000円

・交通費 8,000円

・被服費:6,000円

・交際費:1万4,000円

・娯楽費:4,000円

・こづかい(夫のみ):5万円

・その他(理美容・サブスクなど):3万1,000円

横山:収入がアップしているので、毎月の余剰金は全額投資に回しているようですが、貯金額が少ないようです。最近は投資を過信して投資に偏ってしまう人も増えていますが、それは危険です。貯金と投資のバランスを考えて、お金を貯めることを考えるようにしたいものです。

投資中心にするなら、貯金をしっかりと

相談者様は現状、毎月の収入も多いですし、収支の差額もしっかり出せています。また、ボーナスもしっかり支給されているので、収入面だけを見ると投資を始めても問題ないだろうと思えます。ですが、貯金は足りないと思いますし、1年後に収入が減ることを考えると、支出を減らすことも考えねば、お嬢さんの塾代や学費にも響きます。

投資商品に積み立てているので、お金は十分にあると思われるかもしれませんが、必要ができて現金化するとき、それが最良のタイミングとはいえない場合もあります。相場が下がり、損をした状態で現金化しなくてはいけない場合もあるからです。

そう考えると、生活の備えや、近い将来使う予定のお金は、現金で持っていたほうが得策というわけです。

現金を備えるには段階があります。まず、生活費を上手く回すために「使う」お金として生活費の1.5カ月分。その次に、万が一収入が途絶えるようなことがあった時、生活費に充てることができる「生活防衛資金」として、6〜12カ月分。そのほか、この2〜3年のうちに使う予定のお金も別に貯めておきます。

これだけ備えておけば、万が一、予測しえないことが起きた時にも対応できるでしょうし、大切な投資資産を思いがけず手放すようなこともしなくて済みます。投資資産を大きく育てていく準備の一つとして理解していただければと思います。

増えた収入は貯金に回す

毎月40万円の生活費がかかる相談者様のご家庭は、ようやく生活防衛資金ができ始めている段階です。これを生かして生活防衛資金を作るために、iDeCo、つみたてNISAは継続しながら、それ以外の投資に回している金額を、しっかり貯めてみてはいかがでしょうか。iDeCoは一度始めると60歳までは続けなくてはいけませんし、つみたてNISAは柔軟な資金となり得ますので、始めたのであれば貯金と並走して継続していきましょう。

iDeCoやつみたてNISAを継続しても、あと1年ほどは約14万円の余剰金が残ります。これを12カ月貯めれば、168万円貯められますし、ボーナスからも貯めれば、200万円程度を貯められるかもしれません。

貯金として持ちたい最低額は、生活費1.5カ月分と半年分の生活防衛資金とで、最低7.5カ月分。つまり、40万円×7.5カ月で300万円です。すでに手持ちの70万円と、今後1年で貯められると予想できる200万円ほどで、約270万円の貯金ができると考えられます。あとは生活費をやりくりしたり、ボーナスを生かして貯めていけば、生活防衛資金は作れるでしょう。

お嬢さんの学費については、大学進学費用を貯めつつ、私立中学・高校の費用は、毎月の生活費からねん出できるようにしたいもの。生活費の見直しをして、やりくりを検討しておきましょう。もし大学進学時に貯金では足りないようなら、つみたてNISAの一部を教育費に回すことも考えられます。

また、貯金を継続して余裕資金としての現金を持っていると、今後相場が下がった時に、投資商品を買い増すこともできます。投資をする上でも、メリットがありますので、ぜひ貯金を増やすことを考え、実行していただきたいと思います。

支出の見直しのポイント

支出は、各費目の金額だけに注目して過多を判断するのではなく、今の生活において必要な支出かどうかを基準に見直していきましょう。スマホ代などは、使い勝手を変えずとも、業者を変更するだけで利用料を下げられることが多いですし、生命保険も必要な保障に見直せば、保険料が安くなるということもあり得ます。

水道光熱費は、使い方そのものを見直す必要がありますが、節水シャワーヘッドなどの節約用品を使うことで下げられることもあります。

相談者様のご家庭では、何が必要で不要だと思えるのか、何に妥協できるのか、一度ご家族で話し合ってみてもよいかもしれません。

「収入があるから、今払えるから」でやり過ごすと、将来的に思いがけない困りごとに突き当たるかもしれません。投資だけでなく毎月の収支にも目を向け、より効率よくお金を使い、貯められるようになりましょう。

投資も貯金も、お金の使い方も、何事もバランスが大切です。一度客観的な目線で、見直しをされると、よりよい状況を作ることができるでしょう。

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