「マジやめておけば…」 少年たちが事件を起こす背景さまざま 改正少年法 長崎県内の実像

「厳罰化した」と指摘される改正少年法。少年たちが事件を起こす背景はさまざまだ(写真はイメージ)

 改正少年法が1日施行され、これまで「少年」だった18、19歳は「特定少年」と位置付けられた。犯した罪によっては成人と同じように刑事裁判を受け、起訴時に実名報道が可能となった。更生と刑罰のどちらを優先するのか。「罪」を犯した長崎県内の少年たちの実像に迫った。
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 高校2年の夏。県内に住むケンタ(22)は中津少年学院(大分県)に入った。仲間に誘われ、店で何度も商品を盗み、自動販売機から金を取って逮捕された。
 知的障害があり、とかく周囲に流されやすい性格。「小遣いが少なかったし、誘われたから…」。ケンタはボソボソと言った。
 収容期間は1年3カ月。両親は一度も面会に来なかった。出院後、実家には戻らず、仕事を探して転々としていると、見知らぬ男に声をかけられた。「いい仕事がある。アパートの部屋も用意する」。すぐに飛び付いた。
 車で東北まで連れて行かれ、何かの機械にスプレーを吹き付けるのが仕事。「じょせんさぎょう」と聞いたが、詳しくは分からない。だが、一向に給料が支払われなかったため離職。その後、若者数人で一軒家に住まわされ金銭を搾取される目に遭ったが、どうにか逃げ出した。
 今、県内のある場所で福祉的な支援を受けながら暮らすケンタ。高2の夏から「罪」は犯していない。ただ更生したのか、そうでないのかは自分でもよく分からない。「お金や仕事があれば、悪いことはしたくない」とケンタは言った。
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 3月のある日の夜。県内在住のタイチ(19)は、仲間2人と一緒に、知人の少年を人けのない場所に呼び出した。少年が「タイチは弱い」と触れ回っているのを知り、「絶対泣かしてやる」と決めていた。
 3人がかりで少年に暴行を加えた。背中のつもりが勢い余って顔を蹴り、「あっ、ごめん」と思わず言葉が出た。少年は後日、警察に被害を訴えた。
 小学校時代から万引やけんかを繰り返し「何回も補導された」というタイチ。荒れ始めたのは両親の離婚と母の再婚がきっかけだった。「家に居場所がない」と感じ、今は家族と離れて暮らす。体中にタトゥーを入れ、仲間と車で街を走っても気分は晴れない。いつもいら立っていた。
 少年に対する暴行などについてタイチは3月下旬、身元引受人と一緒に警察署に出頭。捜査は今も続く。「後悔してるんで行動(出頭)で示そうと思った。マジでやめておけばよかったっす…」。子どもっぽさが残る口調で、タイチはそうつぶやいた。
=文中仮名=


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