<てくてく 茂木巡り>茂木四国八十八ケ所 五感くすぐる〝お遍路〟

19霊場を巡った。お遍路笠に白衣姿の参加者も=長崎市茂木町、15番札所

 ビワ畑が海を見下ろすのどかな町、茂木。ビワの実にかけられた袋が幸せの黄色いハンカチのようにも見えて、何だかうれしくなる季節だ。4月30日に開かれた「茂木四国八十八ケ所」を巡るウオーキングイベントにかたらせて(参加させて)もらった。
 茂木四国八十八ケ所は、仏道修行のため弘法大師が定めた本場四国にならい、せんべい店を営んでいた吉松万吉氏が地元茂木に開設したお遍路コース。本人亡き後、妻子が引き継いで1929年に全本尊の安置を終えた。同イベントは茂木地区ふれあいセンターと山登りグループ「長崎朝霧山の会」(橋口善三会長)が共催し、昨年9月から6回に分けて開くシリーズ。最終回のこの日、参加者約40人が宮摺バス停を出発し、茂木に向かって19霊場を巡った。
 「見て、サクランボがなってる」「オガタマの木って甘い香りね」。霊場を目指して入り組んだ民家の路地を通れば、五感をくすぐる情報が次々に飛び込んでくる。ひっそりとした小さなお堂に着くと、入れ代わり立ち代わり仏像に手を合わせ、般若心経を唱える人もいた。
 休憩ポイントでは、冷たい缶コーヒーやぜんざい、地元の菓子「一○香(いっこっこう)」のうれしいお接待も。体の疲れもどこへやら、ゴールの玉台寺(茂木町)まで約15キロを全員で歩き切り、シリーズ通して88霊場踏破の「結願(けちがん)」を迎えた。ダイヤランド2丁目の林孝司さん(70)は「ひと仕事終わった感じ。海山の景色や新緑が楽しめた」と話し、額の汗を拭った。

各霊場の御朱印札

 手入れが行き届かない荒れたお堂もあり、同センターは6月から、全霊場の御朱印札を1枚100円で頒布して改修費用を捻出する計画。岩永一富所長は「たくさんの人に茂木を訪ねてもらい、長く愛される町にしたい」と願っている。


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