「健康保険証」の番号に盛り込まれている情報とは?実は見せてはNGな個人情報

健康保険証は、病気やケガで医療機関の受診するときに必要となりますが、それ以外に本人確認書類として提示を求められることもあります。

マイナンバーカードや免許証のように写真がないこともあり、気軽に見せやすいかもしれませんが、実は健康保険証にはさまざまな情報が盛り込まれています。今回は、健康保険証に書かれていることは何かについてお伝えします。


保険者名称で勤務先がわかる?

健康保険証は、医療を受ける際に提示して、医療費の自己負担分だけ支払います。たとえば会社員であれば、保険証を提示することは、「この保険証を持っているので、医療費の3割だけ払います」と言っているのと同じことです。

あとの7割は、保険証の発行元である保険者から出ます。保険者名は、保険証の下の方に書かれていることが多いようです。

保険者には、健康保険料を給与天引きなどで払っていますよね。多くの人から集めたお金=保険料を、医療を受けた人の7割分にあてている、と考えるとわかりやすいと思います。

保険者は、おもに勤務先で変わります。保険証を持っている私たちは、被保険者として、それぞれの健康保険に加入しています。

この保険者名で、勤務先がどんなところか推測することができます。

■組合健保
おもに大企業に勤める会社員と、その扶養家族が加入します。その会社一社で運営している健康保険と、同業他社と共同して運営している場合があります。転退職すれば、その組合健保からも脱退し、別の健康保険に加入することになります。

■協会けんぽ
おもに中小企業に勤める会社員と、その扶養家族が加入します。運営は、全国健康保険協会。問合せや手続きなどは、地域ごとの支部で行っています。

■共済組合
公務員や、私立学校の教職員が加入します。共済組合は、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私立学校教職員組合の3つがあります。

■国民健康保険
自営業者やフリーランスの人やその家族が加入します。前述の、組合健保、協会けんぽ、共済組合の健康保険に加入していない人は、国民健康保険の対象です。このことにより、国民皆保険が実現しています。

このように、保険証を見るとおよその勤務先がわかります。

事細かにはわからなくても、大企業に勤めているな、公務員だな、といったことは保険証からわかります。勤務先をわざわざ言わなくても、保険証から知られてしまう場合があることは知っておくといいでしょう。

保険者番号でも勤務先がわかる?

また、保険者番号でも勤務先がある程度わかります。

保険者番号は、健康保険の場合は8桁、国民健康保険の場合は6桁です。このうち、健康保険の最初の2桁は法別番号といって、次のようなルールがあります。

保険証に書いてある保険者名称は小さな文字なので、ちょっと見ただけではわからないかもしれません。しかし、保険者番号なら8桁から6桁か、8桁なら最初の2桁は何番か、というくらいは読み取りやすそうです。

社会保険の次の2桁(3~4桁目)と、国民健康保険の最初の2桁は、保険者が所在している都道府県を表します。

都道府県番号

都道府県番号は保険者の所在する都道府県を表しているので、それだけで保険証を持っている人の住所がわかるわけではありません。

それでも、国民健康保険なら住所地の都道府県ですし、社会保険ならおよその地域がわかります。社会保険の保険証では、現住所は裏面に自分で書くことが多いので、そこを見せなければ自分の住所はわからない、とは言い切れないのです。

資格取得年月日で勤続年数がわかる?

いつからその健康保険に加入したかを表すのが、資格取得年月日です。この日付から、勤務先に入社した日、つまり勤続年数が推測できます。住宅ローンやクレジットカードの申し込みの際にはチェックされていると考えていいでしょう。

とはいえ、転勤などの理由で社会保険に入りなおすこともあります。その場合は資格取得年月日が入社した日と一致しませんので、もし指摘されたら慌てず事情を説明できるようにしておきたいですね。

記号、番号で役職がわかる?

保険証の記号は、保険者をあらわすもので、事業所整理記号とも言われます。社会保険の場合は勤務先の企業や団体ごとに異なります。国民健康保険の場合は、自治体ごとに異なります。

保険証の番号は、保険に加入している人をあらわします。企業内のいわば整理番号なので、入社が早い人ほど若い番号になりがちです。そのため、若い番号だと上級職、あるいは経営者、と思われることが多いのですが、決して役職をあらわす番号ではありません。

被保険者で家族がわかる?

社会保険では、たとえば会社員の夫が勤務先で加入している健康保険に、妻も被扶養者として加入する、ということがあります。その場合、夫の保険証には「本人(被保険者)」、妻の保険証には「家族(被扶養者)」と書かれます。

そして、妻の保険証には被保険者の氏名、つまり夫の氏名も書かれます。

保険証には続柄は書かれていませんから、名前だけでは夫かどうかまではわかりません。親や子の扶養に入っている可能性もあります。しかし、扶養に入っていることや、扶養者の名前はわかるので、妻の収入や家族構成を推測されることにもつながります。

世帯主で家族がわかる?

国民健康保険には、社会保険のような被扶養者のシステムはありません。たとえば、夫が自営業で働き、妻もフリーランスで働く、といった場合、夫婦それぞれに国民健康保険に加入します。

ですから、国民健康保険の保険証には、被保険者の氏名の項目はありません。しかし、世帯主名が書かれています。自分以外が世帯主であれば、保険証から少なくとも2人以上の世帯であることや、家族の名前がわかることになります。

氏名で本名がばれる?

当たりまえですが健康保険証には、自分の氏名が書いてあります。しかし、このとおりの名前を使っている人ばかりではないでしょう。旧姓、通称、ペンネーム、といったものばかりではなく、読みにくい漢字をひらがなにしていたり、運勢が良くなるからと読み方は変えずに漢字だけ変えていたり。

保険証の氏名と、いつも使っている氏名が違っていることがわかるので、プライベートなことや、自分なりの価値観など、決して軽くない話になることも考えられます。


保険証からはさまざまなことが推測されやすいとわかります。保険証はいつも持っているものなので、本人確認が必要になると気軽に提示しがちです。しかし、必要性が薄ければ、提示することは控えておくことが望ましいと言えます。

本当に健康保険証の提示が必要なのか、ちょっと立ち止まって考えるクセを付けておきましょう。

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