「対話が大切」被爆者の宮田隆さん 『HIBAKUSHA』ビブスかぶり交流 核禁会議開催地のウィーン

「HIBAKUSHA」などと書いたビブスを着て市民社会フォーラムの参加者と交流する宮田さん(右)=ウィーン

 「HIBAKUSHA! NAGASAKI Any Question?(長崎の被爆者です。何でも聞いてください)」。核兵器禁止条約第1回締約国会議の開催地オーストリア・ウィーンを訪れている雲仙市の被爆者、宮田隆さん(82)が18日、街中で人々と交流した。核廃絶への思いを問われると、相手の目を見てこう語りかけた。「対話が大切だ」
 宮田さんはこれまで、非政府組織(NGO)「ピースボート」で19カ国を訪問し、被爆体験を証言。今年の長崎原爆の日(8月9日)の平和祈念式典で被爆者代表として「平和への誓い」を読み上げる。
 18日正午、快晴のウィーン。NGO核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が主催する市民社会フォーラムの会場入り口で、宮田さんは「ドレスアップ!」と言って、メッセージを書いたビブスをかぶった。フォーラム参加者の英国人男性(39)が早速声をかけてきた。「イギリスもウィーンに来ていない。英政府にどうしてほしいか」
 宮田さんは身ぶり手ぶりを交えながら、英語で「イギリスは巨大な軍需産業を抱えているが、一線を画す選択ができる国だ。市民が政府へプレッシャーをかけないといけない」と回答。男性は膝を曲げて宮田さんと目線を合わせ、うなずきながら聞き入っていた。
 「被爆者として核廃絶をどう見ているか」。ノルウェー人の男性が質問した。北大西洋条約機構(NATO)加盟国で締約国会議へのオブザーバー参加を表明している同国。宮田さんはコミュニケーションの重要性を説き、「ノルウェーは平和のロールモデル。とても重要だ」と答えた。
 切れ間なく宮田さんの周りに人が集まり、対話が生まれる。初めて被爆者と話したというイタリア出身の大学生、アリーチャ・フィリベルトさん(20)は「被爆による影響が今もなお続いていると感じた」。宮田さんは「おのおのが悩みながら平和について真剣に考えていた。互いに共感したり、同調したりして(世界と)連携することが大切だ」と満足そうに話した。
 宮田さんは19日もウィーンで活動した。


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