「ナガサキの声を聞いて」 県内の被爆者ら、核禁会議開幕見守る

インターネット中継で締約国会議の様子を見守る長崎の被爆者ら=日本時間21日午後7時12分、長崎市松山町の「県被爆者手帳友の会」事務所

 核兵器禁止条約第1回締約国会議がオーストリア・ウィーンで開幕した21日、長崎の被爆者らもインターネット中継で議論を見守った。世界のヒバクシャが望む核廃絶への「第一歩」と期待が高まる一方、唯一の戦争被爆国である日本政府は参加せず、落胆も広がった。
 午後5時過ぎ、長崎市の「県被爆者手帳友の会」事務所。数人の被爆者らが見守る中、議場でスピーチ順を待つ朝長万左男会長(79)の姿が画面に映り込んだ。「世界はナガサキの声を親身に聞いてほしい」。会員の早崎猪之助さん(91)は願いを語った。
 締約国会議は、世界の「核被害者」支援が重要議題の一つ。会員の倉守照美さん(78)は被爆後10年余り後に父や姉、兄をがんで亡くし、放射線被害の恐ろしさを肌で感じている。「世界には核実験やウラン採掘などで、人生や家族を奪われた多くの被害者がいる」と語り、治療費を支えるため「各国による基金創設」などの具体的な支援策を求めた。
 ロシアのウクライナ侵攻で核の脅威が高まる中での開幕。三田村静子副会長(80)は「核兵器を絶対に使ってはならない。長崎を最後の被爆地にしてほしい」と語気を強めた。会議では核兵器不使用のメッセージを込めた政治声明が発表される見通し。「核では世界は守れない。ぜひメッセージを発信してほしい」と期待を寄せた。
 会議には、日本と同じく米国の「核の傘」の下にあるドイツなど複数国がオブザーバー参加。参加しなかった日本は開幕に合わせるかのように岸田文雄首相が核拡散防止条約(NPT)再検討会議への出席を表明した。
 県平和運動センター被爆連の川野浩一議長(82)は「歴代首相で初の出席は本来なら歓迎すべきだが、締約国会議に参加しない言い訳に聞こえる」と苦言。「保有国と非保有国の橋渡し役を果たすと言うが、中身が伴わない。具体的な行動で示すべきだ」と求めた。


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