核軍縮へ「非人道性」焦点 核禁会議のポイント 長大レクナ・中村准教授

「条約の規範を強化することで、核軍縮の前進につながることを期待する」と語る中村准教授=長崎市文教町、長崎大核兵器廃絶研究センター

 核兵器禁止条約第1回締約国会議が21日、オーストリア・ウィーンで開幕する。3日間の会議で何が議論されるのか、長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)の中村桂子准教授(核軍縮)にポイントを解説してもらった。

 -会議の位置付けは。
 2年に1度開く締約国会議は条約を前に進めるためのテクニカルな会議。今回の3日間で全ての結論が出るわけではない。専門家会合など次の会議までの進め方の枠組みが決まり、中身を詰める具体的な作業が始まるスタート地点だ。

 -主な議題は。
 条約では、核保有国などが条約に入る際の具体的な手順や、取るべき措置に関する期限を第1回会議で決めると定めている。核兵器廃棄の計画を検証する仕組みや、締約国を増やす「普遍化」なども議題となっており、核被害者支援は日本でも注目されるテーマ。

 -日本の非政府組織(NGO)などが核被害者支援に関する提言を国連に提出したが。
 これまで世界で共有する場がなかった。手付かずで残された宿題に国際的な枠で取り組む歴史的な転換点になる。今回は論点整理までで終わるとみられるが、中長期的に具体的な議論に資するのは間違いない。

 -注目するポイントは。
 「普遍化」の議論につながるが、オブザーバー参加国を含め、どれだけの国が集まるか。同参加国は条約に入る可能性があり「関心を持っている」という、ある種の政治的な表明だ。

 -会議前日にオーストリア政府が「核兵器の非人道性に関する国際会議」を開く。
 核を持たない国々が「非人道性」に焦点を当て、過去3回の会議で健康被害にとどまらず、ジェンダーや環境問題など、核兵器がもたらす影響を多面的にあぶり出してきた。前回の会議には核保有国の米国や英国も参加している。日本など締約国会議へのオブザーバー参加を渋る国を引き寄せる狙いはあるだろう。

 -締約国会議の到達点をどう予想するか。
 核を持たない国々が一枚岩であると強固な連帯を示したい意図がある。何とか合意文書を出してくるだろう。その中で専門家や核被害当事者などさまざまな人を巻き込んだ具体的プロセスが見えてくる。またロシアのウクライナ侵攻で核兵器使用リスクが高まる中、「核兵器は絶対に使ってはならない」といったメッセージ性の強い政治的な宣言が発表される見通しで、注目される。

 -開催の意義は。
 条約の根っこである核兵器の非人道性に光を当てることが今以上に求められていることはない。すぐには見えないかもしれないが、会議を通して条約の規範を強化することで、いずれ核軍縮を前に進めることにつながると期待する。


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