参院選スタート

 「カーボンコピー」といえば、黒いカーボン紙を使った書類や伝票の複写のことだが、コピー機やプリンターの普及で、現物を目にする機会は激減した。メールの一斉送信に使う「CC」はこの略。わずかな痕跡と言えるだろうか▲「参院不要論」では「カーボンコピー」が参院批判の決まり文句だった。「衆院と同じような構成で同じような議論をして同じ結論を出すのでは存在する意味がない」▲そうかと思うと、衆院と参院で議会の多数派が異なる「ねじれ国会」の時期には別角度の参院不要論があった。「参院があるおかげで、なかなか物事が前に進まない」と“決められない政治”の原因にされた▲と、書いてみて「不要論」が、ずいぶんと乱暴な議論であることを改めて思う。議論が「コピー」になってしまうかどうかは、議員たちの自覚一つで容易に変わるし、二院制はそもそも、物事を簡単に決めさせないため、一時の世論によって政治を暴走させないための安全装置だ▲参院選がスタートした。物価高、少子化対策、安全保障、改憲…さまざまな争点が語られている。長崎選挙区の立候補者は過去最多に並ぶ6人▲単色のコピーではない、カラフルな参院をつくる最初の一歩が私たち有権者の一票であることを忘れずにいたい。投票日は7月10日。(智)

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