核禁止条約会議が閉幕 「道筋示された」長崎の被爆者ら歓迎

締約国会議の閉幕を喜び拍手する朝長さん(右)と宮田さん(中央)=ウィーン、オーストリアセンター

 「具体的な道筋が示された」。核兵器禁止条約の初の締約国会議が幕を閉じた。参加した長崎の被爆者らは「核なき世界」の実現を目指す「ウィーン宣言」と「行動計画」を歓迎し、条約を推進していく決意を新たにした。
 閉幕の瞬間、議場の各国政府代表や非政府組織(NGO)関係者らが立ち上がって拍手。会議を見守った長崎市の被爆者で医師の朝長万左男さん(79)と雲仙市の被爆者、宮田隆さん(82)もにこやかに握手を交わした。
 朝長さんは報道陣の取材に「良いスタートを切れたのでは」と安堵(あんど)の表情。宮田さんは「日本が背負った課題は大きい」とオブザーバー参加しなかった自国政府に厳しい目を向けた。
 歴史的な3日間の会議。被爆地長崎からも視線が注がれた。県平和運動センター被爆連の川野浩一議長(82)は、日本と同じく米国の「核の傘」の下にあるドイツなどのオブザーバー参加を「勇気を持って参加した」と称賛。一方で「なぜ唯一の戦争被爆国である日本がいないのか。非常に残念だ」と憤った。
 同団体など長崎の被爆者4団体や市民団体は5月に「核兵器禁止条約の会・長崎」を結成。川野議長は「政府を動かすには推進の動きを広げていかないと」と意気込んだ。
 締約国会議の主要議題の一つ、核被害者支援では、核被害国のための国際的な信託基金の設置検討などが行動計画に盛り込まれた。全国被爆二世団体連絡協議会の崎山昇会長(63)は「支援の方向性が再確認された」と歓迎。核被害者の定義は今後議論されるが「被爆2世など将来世代の被害が過小評価され、対象外となる恐れもある。救済対象と認識してほしい」と求めた。
 長崎大核兵器廃絶研究センターの中村桂子准教授(核軍縮)は、「核抑止論は誤りだ」と断じた「ウィーン宣言」は「逆風にさらされる中、核軍縮の推進を鼓舞する」と評価。行動計画について「目に見える形で道筋を示すもの。何をやるかが明確になり、市民社会も何ができるか知恵を絞ることが必要」と語った。

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