シカの分布拡大 佐世保「ふるさと自然の会」が生息域調査 対策訴え

設置したカメラの映像確認をする川内野会長=佐世保市内

 長崎県佐世保市内で自然保護活動などに取り組む「ふるさと自然の会」は、同市などに定点カメラを設置しニホンジカの分布状況を調査している。シカの生息域は広がってきており、川内野善治会長(74)は農作物や生態系などへの影響を抑えるため、対策の必要性を訴えている。
 有害鳥獣のシカは、イノシシと異なり農作物だけでなく毒性のものも含め食べつくすため生態系への影響が大きい。また、木の皮も食べて樹木を枯らすので被害が大きくなると土砂崩れなどの危険が高まる。同市鹿町町で増えたシカが市内各地に広がっていることから、同会はシカ対策の基礎資料とするため2019年から調査を開始した。

九十九島の人頭島から上忠六島へ泳いで渡るシカ=佐世保市内(ふるさと自然の会提供)

 九十九島では新しい食痕やふんを確認して生息の証拠に。本土は範囲が広く食痕だけで確認するのが難しいためカメラ撮影している。カメラは、同市を中心に北松佐々町や平戸市に計20台設置。3カ月ペースで設置場所を変えながら、どこまで生息しているのか分布の限界点を調べている。
 これまでの調査で、当初見られなかった食痕などが佐世保市日野町や同市吉井町でも確認されるなど分布が広がっていることが分かった。現時点でシカの姿が確認された最北端は平戸市田平町以善免、最東端が佐世保市吉井町立石、最西端が九十九島の下島と下忠六島、最南端は同市俵ケ浦町。シカは九十九島にも泳いで渡っており、浅島では植物「ハマオモト」が全て食べつくされている。

現在のシカの分布状況

 先月3日、月に1度のカメラ映像の確認と電池交換などのメンテナンスを実施。同市吉井町や北松佐々町の山中に設置した四つのカメラを約2時間かけて確認した。
 川内野会長は「これ以上分布が広がらないようシカの数が多い発生地で捕獲していくことが重要。今後は、データを積み重ねて個体数の推定ができるようにしたい」と話した。


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