渡良瀬遊水地のラムサール登録から10年 よみがえる自然の宝庫

薄いもやがかかる中、朝日に照らされる渡良瀬遊水地=1日午前5時35分、栃木市藤岡町内野

 栃木県をはじめ群馬、茨城、埼玉の4県にまたがる渡良瀬遊水地が、国際的な湿地の保全を目的としたラムサール条約に登録されて3日で10年を迎える。登録以降、湿地再生が進み、国の特別天然記念物コウノトリが3年連続で野外繁殖するなど、目に見える形で成果が表れている。周辺市町などで構成する渡良瀬遊水地保全・利活用協議会は同日、小山市文化センターで記念シンポジウムを開く。

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 約3300ヘクタールと広大な面積を誇る同遊水地は、貴重な動植物の宝庫でもある。自然保護団体や関係省庁、周辺自治体などの連携により、湿地保全と、地元住民らが不安視した治水の両立に道が開け、2012年に登録に至った。その後、乾燥化したヨシ原の掘削が進んだ。

 この結果、近年多発する豪雨災害時には大量の雨水を一時貯留して、利根川水系の治水の要としての機能を果たしてきた。

 一方、採餌環境が整って湿地生態系ピラミッドの頂点に立つコウノトリが飛来するようになり、20年からは同市内の人工巣塔でひなが誕生。栃木市内でも別のペアが営巣するなど、専門家らの想定よりも早く豊かな生態系を取り戻しつつある。

 登録に向けた署名活動などを市民団体幹部として展開し、現在は保全・利活用協の会長でもある浅野正富(あさのまさとみ)小山市長は「登録時、10年後にコウノトリが繁殖しているなど想像もできなかった。今は実現しそうもないことも、さらなる10年後には実現するのかもと期待が持てる」と展望した。

 シンポジウムでは、市民団体による活動報告のほか関係首長らがパネルディスカッションを行い、豊かな自然を次世代に引き継ぐための道を模索する。

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