被爆前の日常をデジタル教材化 長大レクナ 被爆者2人の証言基に作成

デジタル教材を作成した林田さん(左)と、写真を提供した三瀬さん(中央)、城崎さん=長崎市文教町、長崎大核兵器廃絶研究センター

 若い世代に原爆や戦争を身近な問題として考えてもらおうと、長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)は、長崎市の被爆者2人から提供を受けた被爆前の日常写真や証言を基にデジタル教材を作成した。
 レクナの林田光弘特任研究員(30)と被爆者の城崎尚道さん(94)、三瀬清一朗さん(87)が27日発表した。
 教材は、大学や高校の授業で使いやすいようスライド形式。「学校には路面電車で通った」「文具店でカードを買い、表に英単語、裏に日本語で意味を書いて勉強した」など、当時学生だった2人の証言と写真を並べ、被爆前の暮らしを紹介している。レクナのホームページで公開しており、教育目的であれば誰でも自由に利用できる。
 林田さんは、被爆前と現代の共通点や相違点を知ることで「(原爆投下が)歴史化されたものではなく、今後もあり得ると想像しやすくなる」と強調。
 飛行予科練習生(予科練)になる友人を見送った時の写真などを提供した城崎さんは「当時は名誉だったが、送り出す親は寂しかったと思う。そういうことも写真から読み取ってほしい」、三瀬さんは「戦火を逃れた古い写真が出てきた。(当時を知る)参考になれば」と話した。
 レクナが国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館から受託した「被爆の実相の伝承のオンライン化・デジタル化事業」(2021~23年度)の一環。初年度は被爆前の写真など6千枚超が寄せられた。同事業ではこの他、ウェブ上の3D地図に原爆投下前と後の長崎の航空写真などを組み合わせるプロジェクトも進行中。レクナは22年秋、これらをまとめた「アーカイブページ」を公開する予定。


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