広がるメリハリ消費での投資のヒント、狙い目は「ラグジュアリー」

物価高騰を受けて、消費行動にも変化が見られます。自分が大切にしていることにはお金をかけ、それ以外の出費はできるだけ抑える、「メリハリ消費」というお金の使い方に注目が集まっています。企業も「あえて高価な商品」を相次いで発表しています。その狙いはズバリ「つぎ込む時は、とことんつぎ込む」という消費者心理です。

ここに株式市場でも注目の動きがあります。


家計逼迫で進む「メリハリ消費」

電気代や食料など、生活で必ず必要な物やサービスの価格が高騰していることで、家計は厳しさを増しています。日用品など日々使うモノを節約する一方で、これまで我慢してきたレジャーや外食にはしっかりつぎ込む、という消費者の傾向が見られます。

コロナ禍で感染対策から消費を我慢してきましたが、経済再開の兆しが見えたかと思ったところでの物価の高騰……これまで我慢ばかりを強いられている消費者にも、生活や時間の過ごし方に潤いが必要ですよね。

例えば、くら寿司ではイクラがたっぷり乗った軍艦巻きや、特製のタレに漬け込んだマグロの値段を220円で提供しています。同社は「100円」という価格で、家族客を中心に堅調な企業ですが、「メリハリ消費」を取り込むべく、通常の2倍の価格の皿を提供しています。

そのほか各企業は、高級ビールの最上位銘柄を新たに売りだしたり、旅行商品では五つ星ホテルなどをそろえた高額プランを投入するなど、各社とも「高級感ある商品」の強化が目立ちます。

企業としては、従来のスタンダードラインに加えて、プレミアムラインも用意するというラインアップが重要になってきます。ずっと我慢を強いられてきた反動で「いつもより、ちょっとお金を払いたい」「少し贅沢な・特別な体験をしたい」という「消費ニーズ」がより高まっています。ここに、株式投資のヒントがあります。

投資の視点−−「ラグジュアリー」なブティックホテル

新型コロナウイルスの感染拡大で家計の貯蓄が積み上がっています。日銀の試算では、消費されずに貯蓄に回った額は2021年末時点で約50兆円にまで膨らんでいます。

もちろん、将来の不安から引き続き貯蓄に回すことも考えられますが、強制貯蓄の中からある程度の金額が消費に向かうことは十分に考えられます。特に、私が注目しているのが「ラグジュアリー」なブティックホテルです。

これまでホテル業界は、万人受けする老若男女のどんな層にも訴求できるものを作ってきました。しかし、対極にあるのがブティックホテルです。ターゲットを明確に決めることで、その層だけに居心地の良い体験や空間を提供する考え方に基づいてホテルを展開していきます。

日本では、まだプレイヤーが少ないものの、欧米では拡大傾向です。海外のブティックホテルは米マリオット・ホテルの「W」や、米エースホテルが当てはまります。「W」ホテルは大阪に上陸、エースホテルは京都に初上陸した時に、大きな話題となりました。ブティックホテルのようなターゲットを絞った事業展開は、ファンを獲得し、リピーターを大切にすることで安定的に成長が可能となります。消費者の求めるものが多様化する中で、全方位的にサービスを展開することは、今の時代には限界があります。

そして「ラグジュアリー」という定義も変化しています。1990年代まではラグジュアリーと言えば「格付」「格式」「値段が高い」というものでしたが、今では金銭的なものだけをラグジュアリーを指すわけではなくなってきています。「非日常」を味わえる空間や、サービスそのものに対して「ラグジュアリー」を指すようになっています。

「唯一無二」の空間

ウェディング業界にハウスウェディングを広めたテイクアンドギヴ・ニーズ(T&G)がいま、ホテル業界にも新しいマーケットを創ろうとしています。それが、ブティックホテルです。国内に「TRUNK(トランク)」のブランドで現在、2店舗運営していますが、今後28店舗にまで拡大予定です。

コロナ禍で控えていたカップルが式を上げるなど、ブライダル業界も回復しつつあります。同社もコロナ禍で赤字転落しましたが、22年の営業利益は20億円の黒字浮上、23年は30億円の黒字見通しで、業績が回復途上です。

しかし、少子化に伴う婚礼市場は業界の課題です。そこで、同社が商機を見出しているのがブティックホテルです。客室は少なく押さえる代わりに、接客を充実させる。高価格帯の料金で宿泊の部屋は1つ1つ強いこだわりがあり、唯一無二の空間を演出します。

チェックのタイミングで、もしスタッフと顧客と会話が進めば、そのままお茶を提供して会話を継続するなど、マニュアル化させていないからこそ生まれる接客スタイルがあります。

私たちが求めているのは効率化された社会だけではなく、偶発性・オリジナルなど、一見すると非効率なところに、時間のゆとりを感じるのかもしれません。

皆さんはどんなメリハリ消費を考えていますか?


コロナの感染が再拡大していますが、自分なりの「メリハリ消費」で楽しんで時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

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