長崎平和宣言骨子 発表 核危機なくすには「廃絶」強調

2022年 長崎平和宣言(骨子)

 長崎市の田上富久市長は1日、長崎原爆の日(9日)の平和祈念式典で読む長崎平和宣言の骨子を発表した。ロシアのウクライナ侵攻で核兵器使用リスクが高まる中、危機をなくすには「廃絶」しかないと強調。原爆で下半身不随となり車いすから核兵器廃絶を訴えた故渡辺千恵子さん(1993年に64歳で死去)のエピソードを通じ、核兵器を三たび使わないよう世界に呼びかける。
 会見した田上市長はウクライナ危機などを踏まえ、宣言を「核兵器を使ってはならないという緊急メッセージになる」と位置付けた。6月の核兵器禁止条約第1回締約国会議に続き、今月は核拡散防止条約(NPT)再検討会議が開催されることから「重要な動きの最中にある式典。核保有国が核軍縮の責任を果たし、具体的な道筋を示すよう求める」とした。
 渡辺さんのエピソードは宣言文起草委員の提案を受けて取り入れ、田上市長は「原点となる被爆者の思いを伝えることが最も強い(発信の)方法。力を借りたい」と述べた。
 「被爆者のいない時代」が近づく中、被爆地の長崎と広島に限らず世界の市民社会が連携し、暴力ではなく話し合いでの解決を目指す「平和の文化」を根付かせていく重要性も訴える。日本政府に対しては、昨年に続き核兵器禁止条約への署名・批准や、「北東アジア非核兵器地帯」構想の検討、「被爆体験者」の救済などを求める。
 宣言文は起草委員の被爆者や有識者ら16人で検討。英語、中国語、ロシア語など10カ国語に翻訳して市ホームページに掲載し、世界に発信する。


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