岸田首相NPT演説 長崎県内被爆者らの反応 姿勢評価も具体策に注文

 1日開幕した核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、日本の首相として初めて演説した岸田文雄首相。被爆地長崎からは、「核なき世界」の実現を目指す姿勢を前向きに評価する意見の一方、具体策に欠けるとの声も聞かれた。
 長崎大核兵器廃絶研究センターの吉田文彦センター長(67)は「ウクライナ危機の中、日本のリーダーとして『核なき世界』を目指す基本姿勢を示したことは重要」と意義を評価。今後は、包括的核実験禁止条約(CTBT)発効に向けた首脳級会合や、米ロ・米中間対話への日本の積極的関与が求められるとして「計画をどうアクションにつなげるか、具体的に示す責任を負った」と述べた。
 岸田氏が示した核兵器不使用の継続など五つの行動計画について、長崎原爆被災者協議会の田中重光会長(81)は「あまり新しい感じはしない」と感想。ウクライナに侵攻するロシアが核で世界を威嚇する中、「核の危険度は最も増している。危険を取り除くには『廃絶』しかないと核保有国に正面から訴えてほしかった」と残念がった。
 学生団体「KNOW NUKES TOKYO(ノー・ニュークス・トーキョー)」のメンバーで長崎市の大学生、山口雪乃さん(19)も岸田氏の会議参加を一定評価しつつ「もう一歩踏み込んで、日本が各国に先制不使用を働きかけるなど具体的なものがあればよかった」。次世代リーダー育成のための基金創設について「若者任せでもいけない。被爆の実相に触れることで逆に日本政府の姿勢が問われる」と指摘した。
 山口さんは6月にオーストリアであった核兵器禁止条約第1回締約国会議に参加したが、日本は同条約に署名・批准しておらず、オブザーバー参加もしなかった。「(岸田氏には)禁止条約とNPTが両輪で動いていると言及してほしかった」と話した。

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