被爆体験者の医療費助成 岸田首相、がんの一部追加検討

 岸田文雄首相は9日、長崎市内で記者会見し、国の指定地域外で原爆に遭った被爆体験者の医療費助成の対象疾病に、がんの一部追加を検討すると明らかにした。がんの種類は未定。来年4月の支給開始を目指す。
 広島原爆で「黒い雨」に遭った人を被爆者と認定する新基準(4月運用開始)への被爆体験者の適用は、「(長崎で)黒い雨が降った存在を示す客観的な資料が必要」などと述べ、適用を認めなかった。
 本県の専門家会議が7月に公表した報告書は、長崎の被爆地域外でも黒い雨が降ったと客観的に認められるなどと指摘。県と長崎市は、広島と同様の事情にあるとして、国に被爆者認定を要望。認定を求める訴訟の原告らは首相の発言に注目していた。
 岸田首相は会見で「厚労省と県市との間で過去の裁判資料を整理し、課題の洗い出しをしている」と説明。その上で「被爆体験をした人が長年の間、病気への不安を感じていると聞いた。高齢化が進む中、至急検討したい」と対象疾病の追加検討に言及した。
 被爆体験者支援事業は、被爆体験に起因する精神疾患などを対象に医療費を支給。援護内容は被爆者に大きく劣る。3月末の県内の被爆体験者は6064人(第2種健康診断受診者証所持者)で、平均年齢は83.4歳。


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