福井県の大雨災害から1カ月 家屋337棟が被害、柱やはりがむき出しのまま取り残され集落閑散「元通りには遠い」

床板がめくられ、柱だけになった住宅。一部の柱は傾き被害の大きさを物語っている=9月4日、福井県南越前町大桐

 福井県南越前町や勝山市を襲った8月上旬の記録的大雨から9月5日で1カ月がたった。集落孤立、断水など甚大な被害を受けた南越前町では、道路脇にたまったがれきが撤去され、浸水した家屋の泥出しがおおむね完了。復旧の歩みが進み、住民は徐々に仕事にも復帰している。一方で、被災した住宅の多くは1階が柱やはりだけになった姿のままで、日常はまだ戻っていない。

 福井県の9月2日現在のまとめによると今回の大雨で、家屋は南越前町230棟、勝山市65棟、大野市17棟、福井市14棟など計337棟が全半壊や浸水の被害に遭った。

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 南越前町鹿蒜地区を流れる鹿蒜川は、至る所で堤防決壊や護岸損壊が発生。両岸の被害箇所の合計延長は、大桐区を除く県管理部分だけで3.9キロに及んだ。流域の平地108ヘクタールのうち68ヘクタールが浸水。道路の流木やがれきは取り除かれたが、えぐられた護岸には応急処置の大型土のうが積まれ、深い爪痕は消えていない。

 県道今庄杉津線は、大桐区の孤立につながった橋の崩落現場がそのまま残されている。8月11日に開通した迂回路は、その後舗装され、住民は片側交互通行で往来を続け、本格復旧は長期化が見込まれている。

 町内の住宅被害は全半壊58棟、床上浸水81棟、床下浸水91棟に上った。災害ボランティアは、8月28日まで連日稼働した町のセンターを通じ、県内各地から延べ4463人が参加。泥出しや家財の搬出に汗を流し、初期の復旧作業はおおむね完了した。現在は土日曜に集中して活動する体制に移行。4日は約30人が上新道や南今庄、大桐で側溝に残る泥上げなどに精を出した。

 南越前町によると、連日片付けに追われていた被災住民の多くは8月下旬に仕事に復帰。高齢者は集落外の親族宅などに引き続き身を寄せているケースが多い。集落は閑散とし、床がめくられてがらんどうになった住宅が人けのないままに取り残されている。

 上新道区の女性(43)は家族6人で暮らしていたが、床上浸水した家の2階で住めるだけの3人が残った。泥をかぶったキッチンは使えず、食事は購入した電気プレートで調理したり、冷凍食品で賄ったりしている。「家族全員じゃないのでさみしい。元通りの生活には遠い」と声を落とした。

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