相続した国債がまもなく満期に…証券会社のおすすめプランに預けた方がいいか?

40代を超えると親の介護や相続に関わる人も多いことでしょう。親から相続した大きな資産の運用方法に迷いながらも適切に判断できないケースも多いように感じています。今回は相続財産の国債が満期を迎え、その後の運用にお悩みの相談事例を元にお伝えいたします。


人生の区切りとお金について考えたいアラフィフ世代は多い

筆者は日頃からファイナンシャルプランナーとして活動していますが、個別相談に来られる方の年齢層は40代後半から50代までのアラフィフ、アラカン世代が大多数を占めています。相談内容はさまざまですが、そろそろ老後に向けてお金周りを考えたいというケースがとても多いです。50代も半ばになると、家族の状況が色々と変わり、人生の区切り、いわゆるライフステージの変化を感じるからでしょうか。2019年の老後2,000万円問題は、良い意味で自分の人生に向き合うことを喚起したのかもしれません。

相談後に多くの方が口にされることがあります。「お金周りのことを色々と考えることは、これからの人生や自分がどう生きていきたいのかを考えることにつながりますね」と。ご相談に来られる方とお話をしていて感じるのは、お金について情報開示いただくことは家族や親などそこに至った経緯やご事情をお聞かせいただくケースもとても多いことです。なかには、話したくはないけれど、詳しく話して事情を理解した上で適切なアドバイスを欲している方もいらっしゃいます。このような相談の中から、今回はお父様から相続した国債の今後の運用方法についてお悩みのAさんのケースを元にお伝えします。

相続した株式はそのままの証券口座で保有を続けることに

昨年お父様が亡くなり、Aさんは株式と国債を相続しました。Aさんのお父様は生前、株式投資が趣味でした。亡くなる数カ月前まで、取引先の証券会社に電話注文をしていたほどです。そんなお父様から受け継いだ資産ですから、株式についてはこのまま保有を続ける予定とのことです。保有銘柄の中からAさんに継承させたいと選ばれたお父様の気持ちに思いを馳せると、早々に売却して資産の組み換えをする気にはなれなかったのです。幸いにも相続した銘柄は、いわゆる資産株といわれるものでした。

一般的に資産株とは、業績や財務が安定していて、配当も比較的高く安定した水準なので、長期保有に耐えうるとされています。なお、将来的に売却を考えるのであれば売買手数料の低いネット証券への預替もメリットがある旨をお伝えしました。というのも株式の取引(現物)にかかる手数料は各証券会社や契約コースによって大きく異なるからです。Aさんが現在預け入れをしている大手証券会社C社の最低手数料2,090円ですが、大手ネット証券では55円、契約コースによっては0円というほどの差があります。

ただし注意点として、株式を預替する時には移管手数料がかかるケースがあります。証券会社によるのですが、大手ネット証券は出庫(他社へ移管)や入庫(自社へ移管)ともに無料です。いっぽうでC社は出庫に1単元1,100円かかるため、Aさんの場合は4万円ほどになります。コストと手間をかけて他社に移管する必要性を感じないとのことでしたので、当分はこのままにしてくことにしました。

証券会社から送られてきたセットプラン 預け入れしたほうがいい?

懸案事項は満期を迎えた国債の運用先についてです。現在、証券口座内には1,700万円ほど、このまま置いておくのは勿体ないと思っていたところへC社からDMが送られてきたのです。円定期預金で3カ月年7.0%の金利がつくと書いてあるので、どうでしょう?と商品案内を見せていただきました。

チラシには「セットプラン」と大きく書かれており、その下には「投資信託・ラップ+円定期預金セットプラン─金利上乗せサービス─」とあります。商品プランのイメージは以下の通りです。
「2:1プラン」の円定期預金は3カ月で、なんと年7.0%の金利がつくのです。Aさんの証券口座内には先述の通り1,700万円ありますから、仮に2:1プランに申し込んだ場合、1,000万円の対象商品購入で500万円の円定期預金が可能ということになります。実際に500万円を年7.0%で3カ月預け入れした場合の利息は8万6,301円(500万円×7.0%×90日×365日)、こちらに20.315%の税金がかかります。現在の預金金利は、高くても0.2%ほどですから500万円を1年間預けても利息は1万円ほどです。3カ月で8万円以上の利息がつくのですから悪いプランではないように思えます。

なお、このプランでは1,000万円の対象商品を購入する必要があります。対象商品とはC社指定の投資信託、あるいはファンドラップの契約です。例えば、指定の投資信託では、購入時の手数料と保有期間中に信託報酬といった運用管理費用がかかり続けます。これらの手数料は商品ごとで異なりますが、高いものでは購入時に3.3%の手数料となるものも。1,000万円の購入で33万円の可能性もあるわけです。さらに保有中は信託報酬が2%前後かかる可能性があると書かれています。もちろん、手数料以上の運用益を得られれば良いのですが、投資信託は元本変動型の金融商品です。

いっぽうのファンドラップですが、こちらは自分で投資信託を選ぶ必要が無い代わりに証券会社と投資一任契約を結び、商品選びをお任せできるサービスになります。ただしお任せするには手数料がかかり、契約資産の時価評価額に対して最大1.76%(年率・税込)の費用と保有期間中には運用管理費用がかかってきます。資産の時価評価額が1,000万円であれば、ファンドラップ手数料が年間17万6,000円とその他に信託報酬2.0%前後の運用管理費用がかかり続けます。

定期預金の利息として8万円以上受け取れるものの、対象商品を購入する時の手数料が受け取る利息の倍以上がかかることをAさんにお伝えしました。投資経験が無いAさんは、とても驚かれ、他の選択肢を含めて検討したいとのことでした。お父様から受け継いだ大切な資産を減らさないためにも、次回の面談ではNISA制度についても詳しくお伝えするつもりです。

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