岸田首相、英女王国葬参列を検討 沖縄敗北を外交で挽回? 「慎重対応を」政府与党に懸念広がる

岸田文雄首相(資料写真)

 岸田文雄首相が19日に行われる英国エリザベス女王の国葬へ参列する方向で検討を始めた。安倍晋三元首相の国葬、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題など内政上の課題を巡り「しくじり対応続き」(自民党幹部)の中、「外交での挽回(ばんかい)を目論(もくろ)むような姿勢」(同)に政府与党内では「総理はまたも世論の反発を招くのではないか」との危機感が広がっている。

 11日夜、投票締め切りと同時に沖縄知事選の政府与党系候補の敗北が各報道機関の出口調査結果で報じられた。「瞬殺」(自民選対関係者)の衝撃は大きく、松野博一官房長官は12日の定例会見で「さまざまな課題への県民の判断で政府としてのコメントは控える」との表現にとどめ、中央政界への影響についての言及を避けた。

 一方、岸田首相の英国葬への参列については「わが国政府の対応は何ら決まっていない」などと含みを残した。霞が関では「総理は内政上の打撃を外交で挽回しようと考えているのでは」との憶測が飛び交う。

 複数の政府関係者によると、首相はもともと今月下旬にニューヨークで行われる国連総会に出席予定だった。その前にイギリスに立ち寄り弔意を示すとともに、各国首脳との対話の機会を持つ構想という。日本からは天皇皇后両陛下が参列の方向で調整に入っている。

 首相の姿勢を巡っての政府事務方の口は重い。70年にわたり英君主として君臨した女王の国葬へはバイデン米大統領も出席の意向を示している。先進7カ国(G7)はじめ各国首脳や元首クラスが一堂に会する。19日開催なら安倍元首相の国葬(27日)までさして間がない。「同じ弔問外交の舞台たる安倍氏の国葬がかすみかねない」(外務省関係者)からだ。

 「日本を代表し両陛下が出席される見込みなのに岸田総理が出向く必要があるのか。それなら早く国会を開け」と指摘する立憲民主党幹部は「それとも安倍氏の国葬の来賓が貧弱で物足りないからか」と皮肉る。実はその皮肉こそが、事務方が「最も恐れる世論」(内閣府職員)という。

 「岸田総理は国連参加と連動した訪英を『戦略的』と勘違いしている」と説く自民党の閣僚経験者は「打つ手、打つ手が裏目に出る。沖縄敗北の挽回(ばんかい)狙いというのならずれている。2つの国葬によほど慎重に対応しないと泥沼にはまる」と懸念を明かした。

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