“被爆十字架”の複製、今月寄贈 長崎大司教区 米の平和資料センターへ

被爆十字架の複製を手にする髙見名誉大司教(中央)。その奥にあるのが実物=長崎市本尾町、浦上教会

 カトリック長崎大司教区は、原爆で破壊された旧浦上天主堂(長崎市本尾町)内で被爆した十字架の複製を、米オハイオ州のウィルミントン大平和資料センターに今月寄贈する。被爆十字架は戦後、長崎に進駐した米軍人を通じて同センターに渡り、70年以上たった2019年に浦上教会に返還された。
 大司教区によると、被爆十字架は旧天主堂の中央祭壇に飾られていた。米進駐軍の海兵隊員ウォルター・フック氏(故人)が戦後がれきの中から発見。当時親交のあった司教の許可を得て米国に持ち帰り、同センターに寄贈した。
 大司教区は長年保管した同センターへの謝意を示すため、信徒で木工職人の被爆者、西村勇夫さん(今年7月、88歳で死去)に複製の制作を依頼。長男勇二さん(57)も協力し、2年前に複製(高さ94センチ、横30センチ)を完成させた。
 髙見三明名誉大司教(76)らが26日から渡米し届ける。フック氏の遺族と面会し、核兵器廃絶を巡り現地の大学生や議員とも意見を交わす。20日会見した髙見氏は「被爆十字架は原爆の悲惨さを伝える『しるし』。日米友好を深めるきっかけにしたい」と述べた。


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