写真を基に「鳴滝塾」 長崎の窪田さんが模型制作 調度品も動く“芸”の細かさ

鳴滝塾の写真を基に、飛び出す絵本のような模型を作った窪田勉さん=長崎市桜町

 1860年前後に撮影したとみられるシーボルトの私塾「鳴滝塾」の写真を基に、長崎市立山4丁目の木造建築模型作家、窪田勉さん(68)が同塾の模型を制作した。
 窪田さんは小学生の頃から家や自動車の模型を作るのが好きで、大学で建築を専攻し、積算の仕事に携わった。模型作りは手のひらに収まる40分の1の大きさの日本家屋に特化し、資料を基にした建築技法を忠実に再現することにこだわっている。
 同塾の模型制作に取りかかったのは4年前。1894年に取り壊された同塾の建物について書かれた冊子を入手したのがきっかけだった。終活のつもりで妻の実子さんに許しを得て、仕事も辞め、制作に打ち込んだ。
 同塾の外観が分かる写真は正面からの1枚だけで、内部の様子は管理人やお手伝いさんの証言などから検討した論文を参考にした。写真にない建物の側面や裏面、内装の壁紙などは時代背景なども念頭に「ぎゃんじゃなかろうか(こうではないだろうか)?」とイメージしながら作り上げた。

屋根は取り外し可能。内部の調度品や壁紙にも細かな仕事ぶりが光る

 瓦や石垣は一枚一枚作って並べ、障子や小さな机の引き出しさえも本物と同じように動く“芸”の細かさ。窪田さんは「建物は残すことができなくても、模型なら残せる。貴重な紙の資料を飛び出す絵本みたいに形にしたかった」と話した。
 模型は実子さんが同市桜町に構える「はな工房 風」で、10月15日まで展示している。

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