長崎総科大 創立80周年記念講演 バークガフニ氏が退任の意向、思い出語る

「長崎ほど多彩な国際交流の歴史がある街はない」と語るバークガフニ氏=長崎市、長崎伝統芸能館

 長崎総合科学大(長崎市)の創立80周年記念講演会(同大地域科学研究所主催)が11月26日夜、同市南山手町のグラバー園内にある長崎伝統芸能館で開かれ、同大のブライアン・バークガフニ特任教授(72)が講演した。バークガフニ氏は本年度で同大を退任する意向。長崎居留地研究の第一人者として取り組んできた足跡や思い出を語り、「長崎の国際交流史の研究が国際交流そのものだった」と万感を込めた。
 バークガフニ氏はカナダ出身。1972年に来日し、翌年から京都の寺院などで禅の修行を積んだ。82年長崎市に移住。市嘱託職員を経て96年に同大教授、2009年に同大環境・建築学部長に就任した。21年から現職。グラバー園名誉園長も務めている。14年から長崎新聞文化面にエッセー「ながさき異聞」(月1回)を連載。16年に長崎新聞文化章を受章。
 26日は市民ら約190人が参加。バークガフニ氏は来崎以来40年間の自身の活動を、写真などを映写しながら説明。初めて訪れた際、眼鏡橋や石畳など西洋文化が溶け込んだ長崎の町並みに感銘を受け、「自分と同じ西洋人がこの街に滞在し貢献したことを肌で感じて、彼らが何をしたか知りたいと研究を始めた」と研究の端緒を明かした。
 日本の近代化に貢献したスコットランド人貿易商グラバーや英国人実業家リンガーら、居留地を拠点に活動した数々の外国人について調査。イメージや定説にとらわれず史実の究明に努めたことを紹介。海外に住む子孫を探し出し、保存されていた当時の写真などから新事実を発見したエピソードなどに触れ「供養にもなったと思う」と感慨を語った。
 「外国の文化が日本と出合い、新しい折衷文化が生まれる。これが長崎、そして長崎の魅力」と強調。「長崎の本質は世界の人、情報を受け入れる受け皿であること。これからも若い人たちがこれに興味を持ち、新しい長崎づくりに取り組んでほしい」と呼びかけて締めくくった。時折ユーモアを交えての楽しい語りに聴衆が聞き入った。
 バークガフニ氏は退任後も同市を拠点に、自身で設立している出版社での活動などに力を入れる考え。同名誉園長も続ける予定。講演後の取材に「今後は研究や写真などの資料整理に時間を割きたい。出版を通じた長崎の情報の発信にも力を入れたい」と話した。


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