三谷さんと市川さん

 NHK大河ドラマの「鎌倉殿の13人」が大詰めだ。鎌倉幕府を舞台に、時代に翻弄(ほんろう)されるように淘汰(とうた)されてゆく人々の「サバイバルゲーム」が、どんな結末を迎えるのか。目が離せない▲脚本を担当するのは三谷幸喜さん。諫早市が生んだ同じ脚本家の故市川森一さんとは、実はいろいろと共通点がある▲共に日大芸術学部の出身。大河ドラマは3作を手がけた。それに「虚実皮膜」の作風も挙げたい。芸術は虚構と事実との微妙な間にある、という近松門左衛門が唱えたとされる芸術論だ▲現実や歴史をそのまま描くのではなく、微妙に異なる世界を描くファンタジーが両者の真骨頂。市川さんの作品に心酔し、多大な影響を受けた三谷さんは「それはホントに市川先生の影響というか、まねでしかなくて」(長崎文献社刊「脚本家 市川森一の世界」)と語っている▲市川さんが2011年に亡くなった後、新進脚本家を育成しようと「市川森一脚本賞」を贈ってきた財団が、来年1月で解散することになった。財団は「多くの人が支援してくれた長崎への恩返し」として今月17、18日、長崎歴史文化博物館で、市川さんを回顧するテレビドラマの上映会やシンポジウムを開く▲多くの後進に影響を与えてきた市川作品の世界。この機会にぜひ触れてみてほしい。(潤)


© 株式会社長崎新聞社