犬の“効用”

 久しぶりに家族に代わって飼い犬(8歳、中型犬)を散歩に連れ出した。途中、小型犬を抱っこした夫婦から「かわいいですね」と声をかけられた。「人懐っこいんですよ」と思わず自慢▲1人で歩いていても、見ず知らずの人から話しかけられ会話が弾むということはほぼない。しかし犬の散歩では犬好きの人との小さな交流がしばしば生まれる▲本紙に、犬を飼育中だったり過去に飼っていたりした高齢者の健康状態は、そうでない高齢者に比べ良好という研究結果の記事が載っていた▲確かに生活に張りが出て、健康づくりに寄与し地域関係を結ぶきっかけにもなる。一方で日々排せつの処理、餌や水の用意があり、たまには洗ってやらないといけないから、高齢者が飼い続けるなら周囲のサポートが必要。犬のファンクラブをつくって皆でかわいがるケースが紙面で紹介されていたが、民間などの飼育支援サービスがもっと広がってもいいかも▲本紙郷土文芸欄でも犬との交流は時折描かれる。「枇杷の実のたわわに生(な)ったこの道をもういない犬と散歩したっけ」(石井玉江さん)。思い出も安らぎの一助となる▲疲れて帰宅した夜に限ってやたらと手をなめてくる。いたわってくれているのかなと思えば愛着もわく。そんなとき大切な家族だなとしみじみ感じる。(貴)

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