長崎訪問案

 支持率の低下に頭を痛める首相が何か“点数を稼げる”としたら、この話題しかないのだろう…と考えかけて、いくら何でもそれは意地が悪過ぎるか-と思い直している。広島のG7サミットに合わせて浮上しているとされるバイデン米大統領の被爆地長崎訪問▲地上に核兵器が存在する限り、長崎が「最後の被爆地」であることは“途中経過”でしかない。この地でどこを訪ね、誰と会い、何を語るか…という問題は残るが、核大国のリーダーが長崎に足を運ぶことの意味は小さくない▲バイデン氏は「核なき世界」を掲げたオバマ政権を副大統領として支えた。自身は核兵器の“唯一目的化論者”であることも知られている。「米国の核兵器使用は、核攻撃の抑止と、米国や同盟国への核攻撃に対する報復に限られるべき」という立場だ▲大統領就任時には、米国が核の先制不使用宣言に踏み込むことも期待された。それがトーンダウンして見えるのは「同盟国が抑止力の低下を懸念しているから」という説が有力で、その「同盟国」は他でもない日本のことでもある▲米大統領の長崎訪問が実現した際には「核なき世界」に対するこの国の決意や覚悟も改めて試されることを忘れてはなるまい▲鬼が笑う-と言うけれど、来年の5月は決して遠い未来ではない。(智)

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