“島原半島南部の黒糖復活” 無農薬、伝統の鉄釜薪炊き 雲仙、南島原の生産者が「研究会」

サトウキビの搾り汁をじっくりと煮込む川内代表=雲仙市南串山町、有馬黒糖研究会の加工場

 島原半島南部のサトウキビ栽培と黒糖製造を復活させ、守り継ぐ-。雲仙市と南島原市の農業者らでつくるグループ「有馬黒糖研究会」(6人)が雲仙市南串山町の加工場で、黒糖を伝統の鉄釜薪(まき)炊きで製造し、販売している。中でも川内修一郎代表(65)の生産分の黒糖は「雲仙しおかぜ黒糖」として同市特産「雲仙ブランド」認定を受け、ふるさと納税返礼品にもなっている。
 南島原市口之津町の郷土資料などによると、サトウキビ栽培法と黒糖製法は江戸時代の1817年、熊本天草地方から口之津地区に伝わり、島原半島南部に拡大。黒糖の収益性の高さからサトウキビ農家が増え、コメの生産量が減ったため、島原藩が一時サトウキビ生産禁止令を出すほど盛んになった。しかし、明治期に入り、外国製白砂糖の輸入拡大のあおりで徐々に廃れていった。
 川内代表は元々、雲仙市南串山町の造園業者。健康志向の高まりに合わせて、伝統の黒糖を復活させようと、2016年ごろから同市国見町、南島原市南有馬町、同西有家町の農家4人と共にサトウキビ栽培と製糖を準備。19年、同研究会が発足した。

ブロック状に切り出される黒糖

 現在、6人が計1ヘクタールの畑で毎年4月からサトウキビを育て、12月から2月にかけて計1トン近くの黒砂糖を製造、販売している。
 黒糖の製法は島原半島南部伝統の鉄釜薪炊き。会員が一人ずつ日替わりで加工場へサトウキビを持ち込み、全員で加工する。圧搾したサトウキビの搾り汁を大きな鉄釜に入れ、棒でゆっくりかき混ぜながら約6時間、煮詰める。冷まして木枠に流し込み、固まってからブロック状に切り出して販売している。
 「雲仙岳のふもとで潮風に当たり、無農薬で育ったサトウキビに最低限の食用石灰(凝固剤)を加えるだけ。鉄釜のミネラル分たっぷりの安心安全な黒糖」と川内代表。今シーズンは降雨が少なかった影響でサトウキビの糖度が上がっており、「例年以上に甘く、まろやかな黒糖に仕上がっている」とPRする。
 昨シーズン製造分は既に完売。川内代表は元々は趣味の延長で取り組むつもりだったが、収益も伸び、事業として成り立つようになってきた。「さらに仲間を増やし、島原半島南部を再び黒糖の産地にして脚光を浴びたい」と意気込んでいる。
 同研究会の黒糖と、雲仙しおかぜ黒糖は島原半島内のスーパーや農産物直売所などで販売。インターネット注文も受け付けている。問い合わせは川内代表(電0957.88.2063)。


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