卒業式

 「最初で最後の校歌でした」-取材に応えてこう話す生徒がいた。「校歌斉唱」は入学以来ずっと、録音済みの音源で代用されていたのだろう。1番もうろ覚え、2番とか3番まじムリ…そんなふうに笑い合う姿を、最後が笑顔だといいなと願いながら想像した。県内の公立高の多くは昨日が卒業式▲中学を卒業する時期から丸3年間、新型コロナとの並走を強いられてきた。学校から消えたのは歌声ばかりではなかった。今は仕方ないよねと、あれもこれもが「縮小」や「変更」や「中止」になった▲先生方から寄せていただいた「贈る言葉」がきょうの特集面にある。〈2学期になれば大丈夫だろう、新年度までは続くまい…〉そんな希望的観測はすべて裏切られて、という先生の回想を見つけた▲少し前にも書いたが、この3年間がそうなってしまった理由の一つは、何かの決定に伴う責任を引き受けることがとても苦手なこの国の政治や行政にある▲卒業生の皆さんの世代が社会をど真ん中で支える日が遠からずやって来る。もしも、右往左往するばかりで、何も決断できない大人たちの姿が印象に残っていたら遠慮はいらない、しっかり反面教師にしてほしい▲若者たちのゴールはいつも次のスタートと隣り合わせだ。すてきな未来を。ご卒業おめでとう。(智)


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