ACL決勝進出の立役者。赤きスピードスター元浦和FW松尾佑介が挑んだACLを振り返る。

J1浦和レッズとサウジアラビア1部アル・ヒラルとのアジアチャンピオンズリーグ決勝第2試合がきょう6日、埼玉スタジアム2002(午後6時)に開催される。第1試合は敵地で1-1と引き分けた浦和は、3度目の栄冠をかけて中東の雄に全力で挑む。

ここまでの道は決して平たんではなかった。昨季からACLのレギュレーションが秋春制に変更され、春秋制を採用するJリーグ勢にとって逆境しかなかった。

そんな中、昨季浦和FW松尾佑介(現ベルギー1部ウェステルロー)は9試合6ゴール2アシストと圧巻の活躍でチームを決勝へと導いた。仙台大在籍時から松尾を追う筆者が、赤いスピードスターが挑んだACLを振り返る。

彗星のように現れた赤きスピードスター

昨季横浜FCから完全移籍で浦和へ加入した松尾。仙台大時代は東北史上屈指のアタッカーとして名をとどろかせ、2019年に横浜FCの加入内定を勝ち取った。

その後、特別指定選手に登録。J2で21試合6得点5アシストと特別指定選手の最多出場、得点、アシスト記録を樹立して横浜FCのJ1復帰へと導いた。横浜FCで見せた相手を置き去りにするスプリントは、未だに多くのサポーターの目に焼き付いている。

国際舞台はプロになるまで無縁

一方で松尾は世代別代表や全日本大学選抜とは無縁の存在だった。ユース時代は控えに回る日々が続き、埼玉県リーグでのプレーを強いられた時期が多かった。過去の取材で「俺たちは谷間の世代でした」と振り返るも、自身は谷底でもがき苦しんでいた。そのため世代別代表にかすりもしなかった。

大学進学後も状況は変わらなかった。全日本大学選抜の練習会に参加するも、選考から漏れに。同じ東京世代だった同期たちはユニバーシアードサッカー日本代表に選出され、2019年ナポリ大会を制覇。

大学の同世代より一足先にJリーグの舞台で輝きを放ってはいたものの、国際大会は経験していなかった。

そのため、アジアの祭典は未知の領域だった。欧州志向が強い松尾にとって、この舞台での活躍がキャリアのターニングポイントと設定するほど静かに闘志を燃やしていた。

4月中旬から浦和が入ったACLグループリーグFがタイのブリーラム・シティ・スタジアムで集中開催された。松尾はこのグループリーグで5得点1アシストと爆発するも、韓国の大邱FCには不発。チームは2位でグループリーグ突破を決めた。

チームはその後順調に勝ち進んでいった。ラウンド16ではマレーシアのジョホール・ダルル・タクジムFCに5-0で快勝し、続く準々決勝ではBGパトゥム・ユナイテッドFCを4-0で一蹴。準決勝の相手はアジア制覇2度の強豪である韓国の全北現代モータースと対戦が決定した。

決戦で有言実行の先制弾

準決勝の数日前に松尾と話す機会があった。「ここ(準決勝)で結果を出したい」と静かに闘志を燃やす。多くは語らなかったが、胸に秘めた決意はこちらにも伝わってきた。そして赤き背番号11は決戦で有言実行した。

前半11分にペナルティーエリアに切り込んだDF酒井宏樹のクロスに松尾はダイレクトで先制弾をゴールへ押し込んだ。その後浦和と全北は壮絶な熱戦を繰り広げ、PK戦の末に2-2(PK5-3)で浦和は決勝へと駒を進めた。

ACLの活躍もあり、今年1月に松尾はベルギー1部ウェステルローからオファーを受けた。待望の欧州移籍を実現し、現在はベルギーで存在感を出し始めている。

そんな松尾にある頼みごとをした。Qoly編集部からACL決勝前に松尾のコメントを取ってほしいと依頼を受けたからだ。

私は意図を松尾に伝えると、彼は頼みごとを快諾してくれた。以前松尾は「浦和が僕を育ててくれました」と口にしていた。その思いが込められたコメントに多くのサポーターは胸を打たれただろう。(松尾の独占コメント記事)

そして彼は引用リツイートで「We are REDS」と発した。離れていても、共に戦う意志を示した。

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この決戦に松尾は出場できないが、それでも12人目の選手として闘志は埼スタに残している。3度目のアジア制覇をかけた決戦、試合後に勝利の凱歌「WE ARE DIAMONDS」をベルギーにまで響かせてほしい。

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