マスクと無マスク

 ずっと前に「ノーネクタイ」に関する服飾評論家のユニークな解説を紹介したことがある。〈ネクタイの“無い”状態と考えるわけだから、意識の底ではネクタイが結ばれているのだ。ちょうど『裸』という字に『衣へん』が欠かせないのと同じ〉…▲コロナ感染予防のマスクも、背広姿のネクタイに匹敵する地位を占めつつあったのだろうか。通信社の出稿案内のスピーカーから昨日聞こえてきたのは〈にぎわう街、ノーマスク姿も〉。そう、「ノーマスク」が普通の言葉に▲連休が終わって普段の社会や職場が動き出した月曜日、県内はすっきりよく晴れた。同じタイミングで新型コロナウイルス感染症の取り扱いが感染法の「5類」に変わった▲さて、移行初日の様子は…と、会社の近くの商業施設をのぞいてみた。何だかいいな、と感じたのはマスクと無マスクの2人が連れだって歩く姿だ▲マスクを外す解放感は分かるけれど、コロナの何かが消えたわけでもない。あなたはあなた、私は私。友達同士だからって“おそろい”でなくても別に構わないよね…どこか軽やかな感じがする▲5類移行は保健政策上の大きな転換点には違いないが、何の号令でもない。少し変わる-ぐらいがちょうどいい。世の中が一度に動くのは気味が悪いし、気分も良くない。

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