G7注目の半導体 最先端工場が広島に 生産拠点を深掘り 米国マイクロングループ

パソコンやスマホなどに使われ、大量の情報を瞬時に処理できる「半導体」。これから車の自動運転やAI(人工知能)などに欠かせない次世代技術です。

G7サミットでは、“経済安全保障” の面で半導体を巡る動きが注目されます。

広島県 湯崎英彦 知事(去年11月)
「広島で開発と最先端の製造をぜひ続けていただきたいと思います」

東広島市に工場を構えるアメリカの半導体大手…。記念セレモニーには、エマニュエル駐日大使もかけつけました。

学会からは
「マイクロンさんがいるのが、非常に大きいと思いますね、広島県にしても東広島市にしても」

タクシードライバーも
「マイクロンさんがあってからこそ、というのが大きいと思いますね」

きょうのテーマは、「サミットでも注目の半導体 最先端の工場 東広島市の生産拠点を深掘り」。19日から始まるG7広島サミットでも半導体を含む “経済安全保障” についても議論が交わされます。世界最先端の半導体メモリを生産するアメリカ半導体大手の広島工場を取材し、日本法人のトップにお話をうかがいました。

広島・東広島市の山あいでひときわ目立つ建て物。「マイクロンメモリ ジャパン」です。アメリカの半導体大手「マイクロン・テクノロジー」の子会社(日本法人)で、世界6か国にある生産拠点の1つです。

広島工場では、パソコンやスマホに使われる「DRAM」と呼ばれる半導体メモリが製造されています。

河村綾奈 キャスター
「世界最先端の半導体を作る工場は、いったい、どんなところなのか。きょうは少しだけ見学させていただきます」

半導体は、非常に小さな精密機械、ほこりが大敵です。

河村綾奈 キャスター
「まずは、からだをきれいにしますが、ここから先のきれいさの例えなんですが、旧市民球場の8個分の面積の中にほこり1つしか許されない環境に保たれなければならないということなんです。想像できますか、みなさん?」

続いて、全身を防塵服で覆います。

河村綾奈 キャスター
「どうでしょう? OKですか? ありがとうございます。カメラの向こうでたくさんの方が防塵服を着るのを見守ってくれています。では、見学に行きます」

工場内に入る前にクリーンルームと呼ばれる部屋があります。

河村綾奈 キャスター
「(エアシャワーを浴びて)わー。ここまで来たところで機密保持ということで、ここから先は撮影できません。ただ、わたしは見ることはOKということです」

河村綾奈 キャスター
「次から次に四角い箱が流れてきます。スタッフの方は見守っている雰囲気。かなり自動化されています」

マイクロングループは、世界17か国で4万5000人のチームメンバーを抱えています。敷地面積21万平方メートルという巨大な広島工場には3700人のスタッフが働いています。

先月、入社したばかりの山本さんです。

新入社員 山本心 さん
「大学では微生物の研究をしていまして、すごく小さいけど、大きな働きをしているというものにひかれるようになって、半導体に興味を持つようになった。せっかくなら大きな働きをしたいと思って、世界的な半導体メーカーであるマイクロンに入社しました」

海外のスタッフも多く、社内にはイスラム教の祈とう室も設けられています。また、英語での資料作成などをサポートする部屋もあります。国際色豊かな光景です。

中国出身のルさんです。新しいことにチャレンジしたいと、シンガポール工場から日本工場に来たそうです。

ル・シュエファンさん
「マイクロンは働くのにすばらしい職場です。多様性・平等性・包摂性(誰もが参画できる)について国籍など違った背景を持った人が働けるところが大切だと思っています」

4月、広島大学に半導体の開発や人材育成の拠点となる研究施設が完成しました。経済産業省が10億円を支援した産学官での取り組みです。

広島大学 寺本章伸 教授
「マイクロンさんがいるのが、非常に大きいと思いますね、広島県にしても東広島市にしても、マイクロンがいることでやはり一緒になって、産業界だけじゃなくて、地域も一緒になって大学と一緒にやっていこうというふうに思っていただけるのは、マイクロンさんがいるからっていうのが非常に大きい」

地元に与える影響は大学だけではありません。例えば、こちら。タクシー・バス合わせて100台以上を所有する東広島タクシーです。

東広島タクシー 上田直信 さん
「コロナ禍では非常に厳しいところがあったのですが、マイクロンさんの毎日、送迎があったので、非常に助かっていたと思います」

タクシーの売り上げのうち3~4割がマイクロン関係だといいます。

東広島タクシー 三好達臣 課長
「ドライバー1人の売り上げの3割以上はマイクロンがないと成り立たないんじゃないかと思いますね。3割とは言わないかもしれない。もっと大きいかもしれませんね」

― この東広島にとってマイクロンの存在は?
「わたしはこの仕事に関わっているので、すごく実感はあるんですけど、不可欠な、ないと困る存在だと思っています」

人材開発や経済面でも東広島に貢献しているマイクロン。日本法人のトップ、ジョシュア・リー代表に聞きました。

ジョシュア代表は、1999年にシンガポール工場に入社。20年以上にわたり半導体の開発・製造などに携わり、産学連携にも力を入れてきました。

河村綾奈 キャスター
「広島工場には大きな投資をしたが、グループの中でどんな位置づけ?」

マイクロンメモリ ジャパン ジョシュア・リー 代表
「広島工場は、DRAMの研究開発・生産において先端的な役割を果たしています。1つの場所で製造と研究開発をすることで、業界でも最初に1ベータDRAMの生産が可能になりました」

広島工場では世界最先端の半導体メモリー「1ベータDRAM」が開発され、量産が始まっています。従来より高性能で消費電力が少なく、車の自動車運転技術での活用も期待されています。

マイクロンメモリ ジャパン ジョシュア・リー 代表
― 日米の国策の中で日本工場の位置づけは?
「マイクロンの日本に対する姿勢は、日本とアメリカの強い関係性を映し出していると思います。日本政府の支援には感謝しています。日本は半導体の人材育成を進める、そして半導体産業を活性化していくという戦略をとっている。マイクロンもこの方針を強めていくことになると思います」

― 日米の国策の中で日本工場の位置づけは?
「技術革新を進めるために人材育成が大切になります。そのために大学と組んだ研究開発も進めています。若い人にもこの分野に参入してもらいたいです。地元の支援もあり、産学官で連携した取り組みを進めたいです」

― G7広島サミットではどんなことに注目?
「広島にとってエキサイティングなことです。世界のリーダーが集まり、革新的な考え方、相互協力の精神でわたしたちは1つになることができると思います。国レベルで連携していくことで、われわれは勝利をおさめることができると思います」

― 今後の広島工場は?
「マイクロンは日本の半導体成長のため、技術向上のため、引き続き日本に大きな投資をしていきます。生産性を上げて、サプライチェーン(供給網)を強めていくことで世界のお客さまのニーズに応えていく。最終的には日本の成長に貢献していきたいと考えています」

― 半導体は、中国の市場も大きく、サミットでは経済安定保障の面でも中国などへの依存を脱却するため、サプライチェーン(供給網)の強化に向けた議論が行われる予定です。

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