ハーブ香るベトナム風ビーフシチューをレトルトに 来日21年の起業家が開発、母国の味に込めた願い

「ご飯とはもちろん、麺類とも相性がいい」と話すレファン・バオカンさん=神戸市中央区東川崎町1

 日本在住歴21年のベトナム人起業家、レファン・バオカンさん(43)=神戸市=が、故郷の味を再現したレトルト食品を開発、販売している。「食を通じて互いの文化を知る一歩になれば」と話す。(津田和納)

 バオカンさんは2002年に来日。大学で日本語や文化を学んだ後、関西学院大大学院商学研究科でマーケティングを専攻した。

 語学力を生かし、日本の市場調査会社で経験を積み、20年3月に「ハッピーライフ貿易」を起業。日本の健康食品をベトナムに輸出する。

 事業の傍ら、神戸で暮らす同胞のため、区役所でベトナム語の翻訳も始めた。1980年代にベトナムを逃れた「ボートピープル」が核家族化し、技能実習生の若いベトナム人との間に大きな価値観の違いがあることに気付いた。年配のベトナム人たちは日本人との関わりも少なく、社会から孤立しているようにも感じた。そこで「日本人とベトナム人、そしてベトナム人同士が理解、交流できるきっかけを」と、母国の定番料理「ボーコー」のレトルト化を思いついた。

 ボーコーはあっさりとしたスープに大きく切ったニンジンや牛すね肉が入ったベトナム風のビーフシチュー。レモングラスなどさまざまなハーブで風味と香りを付けた。家庭料理として、ベトナムでは元気をつけたい時に食べるほか、晴れの日の料理として定着している。

 バオカンさんの実家はホーチミンで80年間続く飲食店。譲り受けたレシピを基に、日本人の舌にも合うよう改良を重ねた。保存料は使わず、乾燥レモングラスをふんだんに用いる。スープにはとろみを付け「納得いく味になった」。大学院の先生や先輩ら約30人に3回、試食してもらい、レトルト化に当たってのデザインやホームページづくりも日本人と協働した。

 今後はベトナム以外の国や地域の料理も紹介したいという。「食を通じて多様な人々が共同で作業し、つながるきっかけになれば。外国人も積極的に参加できる仕組みを行政と一緒になって考えていきたい」と夢は大きい。

 ハッピーライフ貿易のホームページで販売。1個(300グラム)1200円。

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