人道法と核の関係を考察 長大レクナ HPで論考集公開

公開した論考集のポイントを説明する河合副センター長(左)と吉田センター長=長崎市文教町、長崎大

 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)は、吉田文彦センター長を代表者とする研究プロジェクト「安全保障を損なわない核軍縮」(2021~23年度)の一環で、論考集「核兵器問題の主な論点整理 国際人道法編」をホームページ(HP)で公開した。国際人道法と核兵器との関係に焦点を当て、多角的に分析している。
 同プロジェクトは、安全保障環境の悪化などを背景に核軍縮が停滞する中、核兵器や核抑止を総合的に評価し、核軍縮の進展を促す狙い。国内の研究者12人が▽国際政治・安全保障▽核不拡散▽国際法-の3分野に分けて考察している。
 「国際人道法編」はレクナの河合公明副センター長と大阪学院大国際学部の真山全教授が執筆。19項目で体系的に整理した。
 核兵器による威嚇の適法性を巡る論考では1996年の国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見を考察。同意見は「核兵器の威嚇、使用は国際法に一般的に反する」とした一方、国の存亡にかかる極限状況での自衛手段としての是非については判断を避けた。論考では、国連憲章の「武力による威嚇」禁止規定などを基に考察を進め「特定の相手による武力攻撃の発生がない場合、威嚇の適法化は難しい」と結論付けた。
 5月31日にあった記者会見で、吉田センター長は「『核の使用や脅しは国際人道法上とんでもないことだ』という規範が抑止力になる。各国は核廃絶に向け、規範を高める責任があり、その中で安全保障の考え方も変わっていく。その流れを強めていきたい」と語った。
 レクナHPでは既に「国際政治・安全保障編」も公開。研究の成果は出版物としてまとめる予定。

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