大分市の刀鍛冶、新名さんが公募展で銀賞第二席 「豊後刀を伝えていく」【大分県】

火造りした刀の曲がり具合を確認する新名公明さん
新作日本刀研磨外装刀職技術展覧会の作刀部門で銀賞第二席を受賞した新名さんの日本刀
火床で鋼を熱する新名さん

 【大分】大分市三佐の刀鍛冶、新名公明(こうめい)さん(56)=造園会社経営=が公益財団法人日本刀文化振興協会(東京都)主催の「第13回新作日本刀研磨外装刀職技術展覧会」の作刀部門で銀賞第二席を受賞した。現代の刀工が腕を競う国内有数の公募展。4年前に刀匠(とうしょう)の資格を得て、短期間で入賞した。「大分市高田地区が発祥といわれる豊後刀を伝えていく」と伝統文化の継承に力を注ぐ。

 きっかけは9年前、友人から勧められて臼杵市で開かれた刀鍛冶の勉強会に参加したこと。当時、講師から「大分県には刀鍛冶がいない」と聞き、職人気質ゆえか「私がなります」と志願した。講師から「どんなに大変なことか分かっているのか」と忠告されたが、揺るがなかった。

 週末ごとに四国などの鍛冶職人を訪ね歩いた末、熊本県にいる刀鍛冶の師匠に弟子入りした。造園業の傍ら、多い時で週2回通った。三佐に作業する鍛錬場を設け、技術を磨いた。2019年6月、資格試験となる文化庁主催の「美術刀剣刀匠技術保存研修会」を修了し、作刀の承認を受けた。

 県内で刀鍛冶の資格を持つのは3人。新名さんの屋号は「平清明(たいらのきよあき)」。作業は「火床(ほど)」という炉で炭を1300~1360度に熱し、原料の玉鋼(たまはがね)を溶かさず、たたいて伸ばして折り返し、強度を高めるなど、細かい工程を根気よく続ける。

 豊後刀を主にした鎌倉末期の刀を再現しており、これまでに約70振りを制作した。同展覧会への出品は2度目。昨年は入選した。

 今回、新名さんが制作した日本刀は長さ71.8センチ、反り1.6センチ。全国から計57点が出品され、作刀部門は新名さんを含めて9点が入賞した。5月27日に長野県坂城町の「鉄の展示館」で授賞式があった。作品は8月27日まで同所で展示されている。

 日本刀は美術品として鑑賞される。心身ともに健康でなければ、いい作品はできないという。「成功も失敗もある。生涯、納得のいく刀は作れないだろうが、ゴルフ同様、同じことを二度とできないのが魅力。今後は豊後刀を作る若者を育てたい」と話した。

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