模型作り始めて半世紀 川里さん「94歳の作品展」 蒸気機関車など90点 長崎市内で26日まで

船の作りについて説明する川里さん=長崎市、石丸文行堂本店

 子どもの時、煙を噴き上げながら走る蒸気機関車に心を奪われた。現代の電動モーターには出せない蒸気機関車の「メカニカル」なさまに今でも心を動かされる。40代のころから模型作りなどを始めて半世紀。「好きじゃなかったら続けられない。めんどくさいのが楽しいじゃないか」-。長崎県長崎市北陽町の川里昭三さん(94)の作品展が、浜町の石丸文行堂本店6階のイベントホールで開かれている。
 1928年、同市で生まれた。10歳のころ父の仕事で名古屋に行き、17歳の時、終戦を迎えた。「あと1年、遅かったら徴兵されていた」。終戦後、長崎に戻り、NBCラジオなどで定年まで働いた。
 仕事が終わると、作業小屋にこもり、物作りに没頭する日々。本などを読んで独学し、材料は全て一からそろえた。会場でひときわ、目立つスチームトラクターは真ちゅうの板から作ったという。これまで手がけた作品は約200点。「好きなことはいくらでもできる」と胸を張る。
 90歳になり、終活を始めた。「自分がいなくなったら邪魔になるだろう」。今まで作ってきたものを処分しようと思っていたら、周りの人が「もったいない」と引き留めた。そこで、長女の山口香緒さん(60)が「父の作品をいろいろな人に見てほしい」と思い立ち、企画したのが「94歳の作品展」だ。
 会場に並んだのは蒸気機関車や船の模型をはじめ、木彫りの花や風景など約90点。訪れた石神町の稗圃久美さん(62)は木彫りの山吹を見て「木なのに吹いたら揺れそうな柔らかさが感じられる」と話した。
 作品が気に入ったら、1人1点無償で譲っている。販売できる出来栄えだが「商売は意志に反する」というこだわりからだ。「この94年間は長かったけど楽しかった。(作品は)好きな人に大事にしてほしい」。物作りに打ち込んできた年月に思いをはせた。
 作品展は26日まで午前10時半~午後7時(最終日は午後2時まで)。

ひときわ目を引いたスチームトラクター=長崎市、石丸文行堂本店

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