校長室で「特別授業」 能登半島さいはての珠洲 ランタンの明かり頼りに

校長室で英語の「授業」を受ける7~9年生=9日午前11時半、珠洲市大谷小中

 能登半島地震で大きな被害を受けた珠洲市大谷地区。9日、住民約230人が避難する大谷小中学校へ向かうと、校長室から授業を行う教師の声が聞こえた。学校再開の見通しは立っていないが、被災した教師たちが珠洲市街から悪路の峠を越えて通勤し、子どもたちに「特別授業」を行っていた。(珠洲支局長・山本佳久)

 能登外浦は道路が寸断され、大谷地区に入るには内浦からの険しい峠道のみで、ぬかるんだ悪路が車を阻む。集落に入ると、あちこちで家屋がつぶれ、陸上自衛隊の車両が行き交う。

 大谷小中学校は児童生徒23人全員が無事で、うち十数人が校舎で避難生活を送っている。9日の3学期始業式は延期となったが、校長の上田辰美さん(59)ら教員4人は教材を持参し、学校にやってきた。

 教室は住民が寝泊まりに使っているため、校長室が即席の教室に。中学生にあたる7~9年生の7人が、ランタンの明かりを頼りにプリントに目をやる。黒板はなく、教員は手にしたボードにアルファベットをつづっていた。

 7年の田谷(たや)清真(しょうま)さん(13)は「避難所で1人で勉強するより、みんなと一緒に先生に教えてもらった方が内容が頭に入る」とほほ笑む。8年の辻花若菜さん(13)は「先生に教えてもらえてうれしい。できるなら、いつものように教室で勉強がしたい」と願った。

 市中心部にある飯田高を目指す受験生の保護者は、峠道しか通じない状況に「あんな道じゃ子どもを高校に通わせられない」と嘆く。早く揺れが収まり、道が通じないだろうか。「さいはて」で生まれ育った子どもたちの未来につながる道の復旧が待たれる。

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