「中村医師と訪れたかった」足利出身・映画監督の谷津さん、田中正造ゆかりの地でしのぶ

渡良瀬川の堤防で会話をする谷津監督(右)と坂原さん

 【足利】市出身の映画監督谷津賢二(やつけんじ)さん(62)が10日、足尾鉱毒事件の解決に生涯をささげた田中正造(たなかしょうぞう)のゆかりの地を訪問した。アフガニスタンで凶弾に倒れた中村哲(なかむらてつ)医師と正造を重ね合わせ、「中村医師と一緒に訪れたかった」と故人をしのんだ。

 谷津さんは、アフガニスタンで医療や用水路建設に尽力した中村医師を21年間密着取材し、ドキュメンタリー映画「劇場版 荒野に希望の灯をともす」を制作した。9日に市内で上映会が開かれ、講演も行った。

 正造を敬愛していた中村医師は「正造のように時代を超えて輝く偉人は世界でもめったにない。日本にこのような人物がいたことを忘れないでいたい」と評し、谷津さんに「渡良瀬川を歩いてみたかね~。案内して」と話していたという。

 ガイドを務めたのは、2022年に閉校した市民団体「田中正造大学」の元事務局長坂原辰男(さかはらたつお)さん(71)。上映会を企画したメンバーと親戚だったことから実現した。

 洪水で周辺が鉱毒被害を受けた福富町の堤防から渡良瀬川を見渡し、「正造は死ぬ間際まで渡良瀬川周辺を歩いていた」と説明。谷津さんは「中村医師もクナール川の両岸を歩き回っていた。ここにお連れしたかった」と残念がった。

 谷津さんは正造「第6の分骨地」とされる野田町の寿徳寺のほか、佐野市の市郷土博物館なども見て回った。

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