【追加32曲解説】漫画『気になってる人が男じゃなかった』2巻にあわせて増曲したプレイリスト

(C) Arai Sumiko / KADOKAWA

2023年4月19日に第1巻が発売、2024年2月27日に第2巻が発売になった新井すみこ氏による漫画『気になってる人が男じゃなかった』。作者のX(Twitter)で公開されると瞬く間に話題となり、単行本が発売されると日本の漫画界の中で最も注目される漫画賞やランキングなどを受賞している。

・宝島社「このマンガがすごい!2024」オンナ編第2位
・「次にくるマンガ大賞2023」Webマンガ部門第1位
・pixivコミックランキング2023 「恋愛部門」第1位
・『ダ・ヴィンチ』 BOOK OF THE YEAR 2023 コミック部門第2位
・「マガデミー賞2023」審査員特別賞をみつき&あや(*主人公の二人)が受賞

第1巻の単行本発売を記念して公開されたプレイリストの収録曲38曲に続いて、2巻発売のタイミングにて全32曲が追加となった。この追加された32曲を解説をお届け。公式プレイリスト

また2024年5月29日にはプレイリストから厳選された楽曲がコミック・サウンドトラックとしてCDで発売、7月31日にはカラー・ヴァイナルにて発売されることが発表となっている。


 

39. ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツ「I Love Rock ‘N Roll」

第2巻「カメレオン」にて、沖縄の修学旅行中に一人疎外感を感じてしまった「みつき」を元気づけようと、夕食のときに学年全員の前で「あや」がカラオケで選んで歌った楽曲がこの曲。最初は片言な英語の発音のために囃し立てられるも、サビでの「ロックが好きだ!」という歌詞を熱唱して、この曲を知らないであろう他のクラスメイトも盛り上げたようだ。次の回では「3曲連続歌った」と言っているのであとの2曲が気になるところ。

もともとは1975年にアローズというUKバンドが発売した曲。当時珍しかった全員女性のバンドであったザ・ランナウェイズのメンバーとして活躍したジョーン・ジェットが、テレビでアローズがこの曲を演奏しているのを見て気に入り、最初はソロとしてセックス・ピストルズのスティーヴ・ジョーンズとポール・クックと一緒にレコーディング。その後、自身のバンド、ザ・ブラックハーツとともに再度レコーディングしたヴァージョンが全米1位を記録した。

 

40. The Jins「Metro」

ザ・ジンズは、2015年に6曲入りEP『The Jins』でデビューしたカナダ・バンクーバーを拠点に活動する3人組インディー・ロック・バンド。90年代のシアトル(=グランジ)サウンドを基調にしたサウンドで活動を続けており、2019年に発表した「She Said」はTikTokでも話題となった。

 

41. ザ・ホワイト・ストライプス「Fell In Love With a Girl」

米デトロイト州ミシガンにて1997年に結成されたデュオ・バンド。ギターとヴォーカルとジャック・ホワイトとドラムのメグ・ホワイトという珍しい編成ながら、2000年代の米ロック・シーンを代表するバンドに成長。2011年に解散となった後、ジャック・ホワイトは自身のソロだけではなく、プロデュースやアナログ・レコードのプレス工場の経営など多岐にわたって活動している。

「Fell In Love With a Girl」は2001年の3rdアルバム『White Blood Cells』に収録された楽曲。ミュージック・ビデオはミシェル・ゴンドリーが監督したもので、冒頭に登場する少年は監督の息子である。

 

42. ベースメント「Are You The One」

2009年に、英サフォーク州イプスウィッチで結成された5人組のロック・バンド。EPやアルバムのリリースを続けていたが、2ndアルバムの制作後の2012年に活動休止を発表。しかし、2014年に再始動を果たし、来日公演も行っている。「Are You The One」は2019年に発表されたシングル曲だ。

 

43. ピクシーズ「All I Think About Now」

1986年に米マサチューセッツ州ボストンで結成されたバンド。90年代のオルタナティブ・シーンの中で活躍し、母国では一度もアルバムチャートでTOP10に入ったことはなかったが、UKでは6作品がTOP入りを果たすなどヨーロッパでの人気が高かった。1993年に惜しまれつつ解散するも、2004年に再結成し、現在も活動を続けている。

「All I Think About Now」は、2016年に発売となった6枚目のアルバム『Head Carrier』に収録された楽曲。2013年にバンドを脱退することになったキム・ディールにあてて、「幸せだった頃を覚えてる? 今、あなたにお礼を言ってもいい?」と彼女がバンドに在籍していた時の出来事への謝罪と感謝を伝える手紙のような形式になっている。

 

44. ザ・シンズ「Caring Is Creepy」

「みつき」の叔父である「譲」が、自身の進路について悩む姪っこに渡したのがこの楽曲が収録されたザ・シンズのアルバム『Oh, Inverted World』。そのあとの回で、「あや」と「みつき」の二人が小指をつなぐ場面でもかかっているのが「Caring Is Creepy」だ。また、昔の「譲」と「カンナ」の別れのシーンで、幼い「みつき」がこのアルバムを抱えている描写も登場している。

ザ・シンズは米ニューメキシコ州アルバカーキで1996年に結成されたインディー・ロック・バンド。2001年に発表したデビュー・アルバム『Oh, Inverted World』はインディー・バンドながら10万枚を超えるセールスを記録し、収録曲「New Slang」はマクドナルドのCMに使われるまでになった。

漫画に登場する「Caring Is Creepy」は、「思いやりは気持ち悪い」という意味であり、友人との関係が後戻りできないところまで壊れていることに気づいた男のことを歌った曲。

 

45. フー・ファイターズ「Nothing At All」

漫画2巻の「キャパオーヴァー」にてフー・ファイターズの新譜『But Here We Are』が発売され、内容を聞いてアガる「あや」が「みつき」にアルバムのSpotifyリンクをメッセージで送るシーンで登場する。ちなみに漫画で描かれているSpotifyのアルバムのURLは、実際のものと同じだ。

2023年6月に発売されたアルバム『But Here We Are』は、フー・ファイターズの現時点での最新アルバム。発売の前年にドラマーのテイラー・ホーキンスが急逝したこと、さらにフロントアクトのデイヴ・グロールの母が亡くなったことを受けて発売されたこともあり、“でも俺達はここにいる”という意味のアルバム・タイトルなど、悲しみを乗り越えることがテーマの一つとなっており、米ローリング・ストーンズ誌は「悲しみを直接的な言葉で描いている」と評している。アルバムではフロントアクトのデイヴ・グロールがテイラーに代わり全てのドラムを演奏している。

 

46. オフスプリング「Self Esteem」

2巻収録以降、X(Twitter)で公開された話にて、「あや」から久しぶりに「おにーさん」と言われて、なんだか自分自身に嫉妬している「みつき」のPCに表示されているのがパンク・バンド、オフスプリングの3枚目のアルバム『Smash』だ。

オフスプリングは、米カリフォルニア州オレンジカウンティーで1984年に結成されたバンド。彼らは70年代の政府や慣習、社会に対して怒れる若者たちといったパンクのアティチュードを広くして、そのサウンドをより大きくした楽曲にて世界中で人気を博し、アルバム『Smash』はインディー・レーベルのエピタフからの発売だったが全世界で1,100万枚以上をセールスを記録した。

 

47. ドラウニング・プール「Bodies」

「あや」の自宅で「みつき」に勉強を教えるシーンにて、部屋にポスターが貼られていたのがこのバンド。

ドラウニング・プールは1996年に米テキサス州ダラスで結成されたヘヴィ・ロック・バンド。バンド名の由来は1975年のサスペンス映画『新・動く標的』の原題「The Drowning Pool」からとられている。

2001年に発売したデビュー・アルバム『Sinner』がいきなり100万枚の売り上げを記録したが、翌年にヴォーカリストのデイヴ・ウィリアムスがツアーバスで突然死。2004年に新ヴォーカルを迎えるも数年後に脱退するなど何度か歌い手を交代しながら現在も活動を続けている。

 

48. ターンスタイル「BLACKOUT」

2巻「無自覚さんの春」にて、「みつき」がノイズキャンセリングのイヤホンで聞いていた楽曲。好きな楽曲を集中して聴いていたために「あや」とぶつかってしまうのは音楽リスナーあるあるかもしれない。

ターンスタイルは米メリーランド州ボルチモアで2010年に結成されたハードコアバンド。「BLACKOUT」は2021年に発売され全米チャート30位を記録した3rdアルバム『Glow On』に収録された楽曲で、グラミー賞の最優秀ロック・ソング賞と最優秀メタル・パフォーマンス賞の両方にノミネートされた。ちなみに『Glow On』のアルバムジャケットは桜色だ。

 

49. タイガーカブ「Burning Effigies」

2巻収録「やる気スイッチ」にて、追試の勉強のためにクラスメイトが集まってくれたのに全くやる気を見せない「みつき」に対して、「あや」が聞かせたのがタイガーカブのこの曲。

彼らは2011年、ビートルズが大好きだったジェイミー・ホールが友人ジェイムス・アリックスを最初に結成した英ブライトンで結成した3人組バンド。「Burning Effigies」は2016年に発売されたデビュー・アルバム『Abstract Figures in the Dark』に収録されている曲。

 

50. インキュバス「Wish You Were Here」

2巻収録以降にX(Twitter)にて投稿された「バレバレです」に登場した楽曲。「あや」が気にしているのは、「みつき」ではなく最初に見間違えた「おにーさん」ではないのかと不安になっている「みつき」に対して、「それもしかしてIncubusですか?」と聞いた時の楽曲。

インキュバスは米カリフォルニア州の田舎町カラバサスで1991年に結成されたロック・バンド。「Wish You Were Here」は2001年に発売され全米2位を記録したアルバムのリード・シングルで、バンドの代表曲だ。ブランドン・ボイドはこの曲について「アルバムを制作している時に“愛してるよ”と伝えられる人がいたら、そんな瞬間を分かち合える誰かがそこにいてくれたらと願って作ったんだ」と語っている。

 

51. マザー・マザー「Hayloft」

2005年にカナダのブリティッシュコロンビア州クアドラ島で結成された男女混成5人組のインディー・ロック・バンド。メンバーのモリー・グルドモンドとライアン・グルドモンドは実の姉弟でもある。カナダを中心に活動をしていたが、その後メジャー・レコード会社と契約。

2008年にアルバム『O My Heart』に収録されていたこの曲「Hayloft」は、2020年代に入りTikTokを中心にヒットを記録。バンドはその続編として「Hayloft II」を2022年に発表し、そちらもヒット曲となっている。ちなみに聞き取りづらいがサビでは「My daddy’s got a gun/You better run」と歌い、干し草置き場で愛し合っていた男が、その行為の最中に女性の父親に見つかり、「お父さんは銃を持っているから、逃げて」ということが歌われている。

 

52. ニルヴァーナ「Love Buzz」

第1巻発売のタイミングにてプレイリストに入っていた「Smells Like Teen Spirit」や「Heart-Shaped Box」に続いてセレクトされたニルヴァーナの楽曲。漫画内にこの曲自体は登場しないが、「姪っ子が高3になりました」では「譲」が若い頃に着ていたカート・コバーン的なセーターも登場するなどニルヴァーナへの愛は引き続き溢れている。

楽曲自体は60年代に活躍していたオランダのロック・バンド、ショッキング・ブルーが発売したもので、ニルヴァーナによるカヴァー・ヴァージョンはバンドのデビュー・アルバム『Bleach』に収録されている。

 

53. ミスフィッツ「Hybrid Moments」

叔父と姪と音楽」にて「譲」と「カンナ」の回想シーンで「譲」が着ているTシャツがミスフィッツ。

ミスフィッツはグレン・ダンジグを中心に、1977年、米ニュージャージーにて結成されたハードコアバンド。バンド名はマリリン・モンローの遺作となった映画『荒馬と女』の原題「The Misfits」からとられている。“ガイコツペイント”のメイクとモヒカンの真ん中をたらすような“デヴィル・ロック”というヘアスタイルにてヴィジュアル的にも人気を博した。

「Hybrid Moments」は1978年に録音されるも当時はお蔵入りとなり、1996年に改めて発売されたアルバム『Static Age』に収録された楽曲。

 

54. アリス・イン・チェインズ「Would?」

2023年8月に、X(Twitter)にアップされたイラストで「みつき」が着ているTシャツにバンド名が描かれているのがこのバンド、アリス・イン・チェインズ。

彼らは1987年に米ワシントン州シアトルで結成され、同郷・同世代であるニルヴァーナやパール・ジャムといったバンドたちと一緒にグランジ・ムーヴメントを牽引したグループ。しかし、ヴォーカリストのレイン・ステイリーがドラッグの問題によって、2002年に逝去。バンドは解散するかと思われたが、ウィリアム・デュヴァールを新ヴォーカリストに加えて2005年から活動を再開している。

「Would?」は1990年に亡くなったマザー・ラヴ・ボーンのヴォーカリスト、アンドリュー・ウッドへ捧げた楽曲で、1992年にキャメロン・クロウ監督の映画で当時のシアトルを舞台にした『シングルス』に提供された。キャメロンが共同監督とつとめたこの曲のミュージック・ビデオは、 MTV Video Music Awardsにて最優秀映画ビデオを受賞している。

 

55. カー・シート・ヘッドレスト「psst, teenagers, take off your clo」

「みつき」の曲を聴いた「あや」が歩道橋の階段でその感想を興奮気味に話すときに「これはもうウィル・トレドみたいな――」と口にしていたが、ウィル・トレド率いるバンドが、カー・シート・ヘッドレストだ。

家では場所がなく、車の中で録音していたことから“車の座席のヘッドレスト”という変わった名前のバンドはウィル・トレドのソロプロジェクトとして2010年にスタート。ネット(Bandcamp)に曲を上げ続けていると話題を呼び、2015年にインディー・ロックの名門レーベル、Matador Recordsから声がかかり契約を果たした。

「Psst, Teenagers, Take Off Your Clo」はMatador Recordsからの1枚目のアルバム『Teens of Style』に収録された楽曲で、2010年の自費リリースの『3』に収録されていたものを再録したもの。

 

56. ウルフ・アリス「Moaning Lisa Smile」

2010年、英ロンドンにて最初はシンガーのエリー・ ロウゼルとジョフ・オディの二人でアコースティック・デュオとして結成、後に4人組となったロック・バンド。英国で最も権威ある音楽賞、マーキュリー・プライズやブリット・アワード新人賞、アイヴァー・ノヴェロ賞など数々の受賞歴を誇っている。ちなみにウルフ・アリスというバンド名は小説家アンジェラ・カーターの短編集『血染めの部屋』収録の短編小説のタイトルが由来。

「Moaning Lisa Smile」は2014年に発表されたシングルで、人気アニメ「ザ・シンプソンズ」のリサ・シンプソンにインスパイアされた楽曲。

 

57. ブリンク 182「What’s My Age Again?」

1992年に米カリフォルニア州パウエイで結成された3人組のポップ・パンク・バンド。疾走するサウンドに思春期の悩みやスケボー、成長などを“おバカ”に歌った楽曲は全世界的に人気となり、今までに5000万枚以上のアルバムセールスを記録。2005年に活動休止、2009年に再開、そして2022年にはオリジナル・メンバーのトム・デロングが復帰しての世界ツアーと新作も発表している。

「What’s My Age Again?」は1999年のアルバム『Enema of the State』からのリード・シングルで、当初は「ピーター・パン・コンプレックス」というタイトルだったがレコード会社からわかりづらいという指摘を受けこのタイトルとなった。“年齢で行動を変えるのはおかしい”という趣旨の楽曲であり、全裸で街を走るミュージック・ビデオはまさのそのことを体現している。

 

58. ノー・ダウト「Just A Girl」

1986年米カリフォルニア州アナハイムで結成されたオルタナティブ・バンド。ヴォーカリストのグウェン・ステファニーの存在感とスカ・パンク的なサウンドが90年代に大人気となり、特に1995年の『Tragic Kingdom』は全世界で1600枚を超える売り上げを記録した。バンドは2004年に解散、2008年に再結成するも2015年に再度休止。しかし2024年に活動再開を発表して、米最大の音楽フェス、コーチェラのヘッドライナーを務めている。

「Just A Girl」は前述の『Tragic Kingdom』のリード曲。グウェンが深夜、バンド仲間の家に車で出かけたときに父親から当時30歳にも関わらず、説教されたときの経験がもとになっており、「90年代で最も著名なフェミニスト賛歌のひとつ」とも評されている。

 

59. ザ・キラーズ「Smile Like You Mean It」

「次にくるマンガ大賞」のノミネート作品になるよう応援してくれたファンへの御礼として公開されたイラストで「あや」が持っていたのがザ・キラーズのデビュー・アルバム『Hot Fuss』だ。

ザ・キラーズは、米ネバダ州ラスベガスで結成されたロック・バンド。そのサウンドから「アメリカが誇る最高の“ブリットポップ・バンド”」とも評されており、商業的にも今までリリースした7枚全てのスタジオ・アルバムは全英1位を記録している(もちろんアメリカでも全てがTOP10入りと売れている)。「Smile Like You Mean It」はデビュー・アルバム『Hot Fuss』に収録された楽曲。

 

60. メタリカ「Enter Sandman」

前述「姪っ子が高3になりました」にて「譲」が着ているのがメタリカのTシャツ。他の楽曲と同じく、「みつき」が叔父から影響を受けて、自分のプレイリストにも入れたくなったと推測される。

「Enter Sandman」はメタリカが1991年に発売したアルバム『Metallica(通称:ブラック・アルバム)』のリード曲。それまでのスピードや楽器の演奏テクニックが重要であったスラッシュ・メタルというジャンルから、一気にヘヴィかつシンプルな音楽性へと舵を切った楽曲だったが、それまでのファンはもちろん新たなファン層を取り込んで、“カルト”バンドから一気に国民的バンドへの成長した1曲。

 

61. AC/DC「Back In Black」

「みつき」が自作の曲を初めて自分以外の人(=あや)に披露したあと、恥ずかしさを紛らわせるように「口直ししますか」と「あや」に言ったバンドがAC/DC。

AC/DCは、1973年にオーストラリアのシドニーで結成されたロック・バンド。ギタリストのアンガスとマルコムのヤング兄弟に加えてボン・スコットのエナジー溢れるパフォーマンスが大きな話題となり、オーストラリアのバンドとしては珍しく地の国でも成功をおさめた。しかし1980年にボン・スコットが逝去。バンドは解散も考えたが、新ヴォーカリストにブライアン・ジョンソンを迎え、他のメンバーが変わりながらも、現役で活動を続けている。

「Back In Black」は、ブライアン・ジョンソン初のアルバムとなった同名アルバムのタイトル曲。このアルバムは世界中で売れに売れ、オリジナル・アルバムとしては全世界で最も売れたアルバムの一つとなっている。

 

62. スマッシング・パンプキンズ「Cherub Rock」

本解説の最後にも登場するのがこのバンド、スマッシング・パンプキンズ。

彼らは1988年に米イリノイ州シカゴで結成されたロック・バンド。ヴォーカル/ギターのビリー・コーガンが日系3世のジェームス・イハ(日本名:井葉 吉伸)が最初に組み、その後に女性ベーシストのダーシー・レッキー、ドラマーにジミー・チェンバレンが加入して4人組バンドとして活動を開始した。

グランジ主流の時代に活動していた彼らだが、その独自のオルタナティブでドリーミーな音楽性で評価されている。

 

63. ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス「Purple Haze」

「カンナ」が「譲」のレコードショップに訪れた際に見切れているポスターに描かれているのがジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス。希代そして急逝のギタリストであるジミ・ヘンドリックスが組んでいた3人組バンドだ。

日本では「ジミヘン」の愛称でも知られるこのギタリストは、1942年に米ワシントン州シアトルで生れ、軍を除隊後、その演奏力を見出されて渡英。そこで披露したプレイは、エリック・クラプトンやジェフ・ベックといった当時から評価されていた天才ギタリストたちに衝撃を与え、1969年のウッドストック・フェスティバルでの演奏はもはや伝説となっている。しかし1970年、27歳の若さで逝去してしまった。

 

64. ブロンディ「One Way Or Another」

「カンナ」が初登場したライブハウスに張られていたポスターに描かれていたのがこのバンド、ブロンディ。「カンナ」の感じとブロンディのデボラ・ハリーはルックス的に似てなくもない。

ブロンディは1970年年代後半にパンクの次に勃興した音楽ジャンル、ニュー・ウェイブを代表するグループの一つ。ヴォーカルに紅一点のデボラ・ハリーを擁する彼らは、常に新しいサウンドへの挑戦し、1980年の楽曲「Rapture」は、ラップが登場する楽曲としては初めて全米1位を獲得したとされている。またこの曲「One Way Or Another」は1978年にリリースされた楽曲、後年ワン・ダイレクションもカバーしている。

 

65. ウィータス「Teenage Dirtbag」

1995年米ニューヨーク州ノースポートで結成されたロック・バンド。2000年に発売したデビュー・アルバム『Wheatus』はいきなり全英チャート7位を記録し、ウィーザーやシュガー・レイ的なサウンドで人気となり、バンドメンバーは代わりながらも、ブレンダン・B・ブラウンがリーダーとして長年活動を続けている。

「Teenage Dirtbag」は上記デビュー・アルバム収録曲で、UK2位を記録したバンド最大のヒット曲。ブレンダンが10歳の頃、近所で悪魔崇拝的な殺人事件が発生。その犯人がAC/DCのTシャツを着ており、当時同じようなロックTシャツを着ていたブレンダンも偏見の目で見られたことが背景として作曲されたこともあり歌詞に「アイアン・メイデンを聴け」というラインが登場している。

 

66. ターンスタイル「Blue by You」

48曲目に続いて、この記事では2曲目の登場となるハードコアバンド。

「Blue by You」は2015年に発売されたアルバム『Nonstop Feeling』に収録された楽曲。タイトルにもでてくる「青」とは悲しみを表す色であり、この人のせいで自分が青くなったように感じているということが歌われている。

 

67. ウェット・レッグ「Angelica」

2019年に英ワイト島で結成された2人組のインディー・ロック・バンド。2022年に発売されたデビュー・アルバム『Wet Leg』はUKやオーストラリアで1位を獲得。第65回グラミー賞では、主要部門である最優秀新人賞にノミネートされ、最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム賞と最優秀オルタナティヴ・ミュージック・パフォーマンス賞の2部門を受賞している。

「Angelica」は前述のアルバムに収録された楽曲。タイトルとなっているアンジェリカはメンバーのリアンの友人の名前から取られたもので、ミュージック・ビデオはバンド自らが監督し、ワイト島で撮影された。

 

68. R.E.M. 「Shiny Happy People」

1980年、米ジョージア州アセンズで結成されたオルタナティブ・ロック・バンド。90年代から00年代にかけて世界中で人気を博し、アルバムの売り上げは9000万枚以上を記録するも2011年に活動休止を発表。ファンから再結成が待ち望まれている。

「Shiny Happy People」は1991年に発表した7枚目のアルバム『Out of Time』からのセカンド・シングルで、ニューウェーブバンド、B-52’sのケイト・ピアソンが参加している。

 

69. レッド・ホット・チリ・ペッパーズ「These Are the Ways」

「あや」と「みつき」が仲良くなったことで、元々の「あや」の友人だった「ちづる」と「あや」の関係が悪くなったことを知った「みつき」。「みつき」は自分が一歩引こうとして、「あや」と一緒に行く予定だったレッド・ホット・チリ・ペッパーズの来日公演チケットを「ちづる」に渡してしまうという行き違いが発生。最終的に一人で残った「ちづる」が会場前で聴いていた曲がこの曲。

元々洋楽を聞いていなかった「ちづる」だが、この曲を聴きながら「めっちゃ良い曲なのもムカつく」と言っているように、「あや」と「みつき」からの影響を少しずつ受けていることも表現されている。

この曲は、レッチリが2022年に発売したアルバム『Unlimited Love』からの2曲目のシングル。ミュージック・ビデオではベーシストのフリーの妻も出演している。

 

70. スマッシング・パンプキンズ「Tonight, Tonight」

2巻「ガールズナイト」にて、修学旅行の夜、他の女子たちによる恋バナのテンションについていけない「みつき」と、寝たフリをして部屋に残った「あや」の二人が、「これこそがガールズナイトだ」と言って聞いていた曲。

「Tonight, Tonight」はスマッシング・パンプキンズが1995年に発売した2枚組のアルバム『Mellon Collie and the Infinite Sadness』に収録されている。楽曲は70年代に活躍した同郷のバンド、チープ・トリックへのオマージュであり、ビリー・コーガンは虐待された子供時代から脱出した自分自身に向けて作ったとも語っている。また、MVにはジョルジュ・メリエスの無声映画『月世界旅行』を意識したものとなっている。

Written By uDiscover Team

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