お金の専門家が米国旅行から考えた「金融株」が“追い風”の根拠

米国民も値上げで生活は苦しい(C)共同通信社

今年5月に米メジャーリーグのロサンゼルス・ドジャーズの試合を観るため、サンフランシスコ、サンディエゴ、ロサンゼルスの3球場に行ってきました。どこも満員でしたから、やはり大谷翔平効果があるのでしょう。その一方で街中を歩いてみると、例えばショッピングモールとか、ロサンゼルスの中心部の大きい商業施設は、半分くらいテナントが閉まっていて、景気がいいという感じはしませんでした。

日本でも都市部を中心にホームレスを見かけますが出会う頻度が比べ物にならない。調べてみると、米国のホームレス人口は60万人以上。アメリカ経済は強いと言われてきましたが、個人によって状況が違い過ぎて分断されているように感じます。

ホームレスが増えた背景として、考えられるのは、コロナ禍の時に多くの失業者が出たため、米国政府を中心に行った財政出動と、中央銀行の金融緩和が影響しているのでしょう。

お金のばら撒きによって資産価格が押し上がり、あらゆる物にインフレが波及しました。その状況に一般の人々が全くついていけていない。賃金は大して変わらないのに、都市部では住居費が爆上がりしたり、生活がかなり厳しくなっている状況です。

数字上、アメリカの経済は強くて、株価も上がっていますが、人々の生活が豊かになっているかというと疑問です。例えば強いドルを持っていざアメリカで生活しても全然住みやすくないと思います。

ちなみに日本の約3倍の物価高は実感します。スターバックスの一番小さいコーヒーは5ドル(約800円)です。日本の有名なラーメン屋さんにも行きましたが3200円。円安の影響もありますからなおさら。ドジャーズの球場内で缶ビールが20ドル、3000円でしたからね。東京ドームはだいたい一番高くて1000円です。

米国株の注目は「保険」

そんな中で米国株の推奨銘柄を考えてみました。一般消費財は、アメリカ人の購買力は全体で落ちている可能性がありますから、お勧めできません。ただ米国金利がいずれ下がることを想定すると、金融株がいいかもしれません。金利が下がるということは経済が悪化していることを示すので、金融施策としては引き締めから緩和の方に行く。だから銀行、証券や保険も含めた金融株は追い風になります。特に保険はキャッシュが潤沢なので配当金も出やすいですからね。

アメリカに行くと日本がいかに便利で快適であるか身に沁みます。ホームレスが道を汚くしていても気にしないし、電車や飛行機が遅延するのは日常茶飯事。旅の最後のサンフランシスコでは、1泊5万円するホテルに泊まったのですが、シャワーのお湯が出ずに夜が寒くて酷い思いをしました。一方で、日本は便利ですが細かいところに気を遣いすぎて、肝心なところの生産性を下げているのではという風にも思えました。あれば嬉しいけど、無くても大きく困らないサービスに対して神経を使いすぎていますよね。

物を食べるにしろ、ホテルに泊まるにしろ、移動するにしろ、細やかな気遣いが無くても主目的が達成できれば良い訳です。つまりその辺りに寛容さを持つことが、今後の日本経済がさらに復活していくための大事なポイントなんじゃないかなと思いました。

日本は人材不足ですから、Amazonの翌日配送や物が全部揃っているスーパー、時間通りの公共交通機関やすぐ来るタクシーなどの便利な状況は、将来的には当たり前ではなくなるでしょう。もしくは高いお金を払わなくては利用できないようになる。でもそんな不便を少しでも許容して、人材を本当に付加価値が高い産業に労働力を集結させることが大事になってくると思います。

(児玉一希/株式会社RES 代表取締役)

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