終業を知らせるチャイム 社員が向かったのは社内の道場「健康にも投資を」備後の企業で健康経営取り組み広がる 独自の体操を作った企業も 広島

広島県内の企業で健康経営の取り組みが広がっています。独自の体操や、柔道場の開設など企業の「あの手この手」を取材しました。

午前8時、従業員が次々と屋外へ出てきます。集まったのは、現場作業者と事務員のおよそ50人です。福山市内の金属処理加工業・福山熱煉工業です。

「ネツレン体操」と呼ばれる体操は、福山市に本部を構える中国労働衛生協会などの協力で去年秋に作成しました。導入前は各自でストレッチを行い、けがの予防に努めてきましたが、オリジナリティーを出すために新たに作りました。

従業員
「(導入前は)ちょっとこうアキレス腱を伸ばすとか、腰を回す程度で終わらせていました。(導入後)最初はやはり照れくさい面もあったんですけど、当たり前になってきていますし、これがなければ困ると思いますね」

福山熱煉工業が「健康経営」に取り組み始めたのは2022年から。生活習慣病になる危険性が高い人向けの「特定保健指導」の受診率が低かったことから、健康経営の取り組みを社員が会社へ提案して始まりました。

福山熱煉工業 第2生産課 岡田孝 課長
「みんなが楽しく笑顔で、業務の一環で健康経営の取り組みも参加していただいてっていうのを目指しています」

福山熱煉工業の取り組みは、経済団体などでつくる「日本健康会議」が認定する「健康経営優良法人」の「中小規模法人部門」に、2年連続で選ばれました。さらに、そのうちのトップ500社が選ばれる「ブライト500」にも選ばれるなど成果を示しています。

「健康経営」を各企業に勧めている専門家は、そのメリットをどう見ているのでしょうか。中国労働衛生協会の 宮田明 理事長によりますと、健康経営とは心と体の健康を保つことによって従業員が最高のパフォーマンスを発揮し、仕事にもやりがいを感じるようになることだといいます。

健康経営を導入することで▽生産性が向上し、企業価値が上がる、▽従業員が病気にならないことで、健康保険料の負担が軽減する、▽従業員を大事にすることで離職率も低下するなどのメリットを上げます。

宮田明 理事長
「健康にかかるお金を『費用』と考えるのは誤りで、これからは『投資』と考えてくださいと。今は、人に投資する時代。だから人にスキルとかね、知識を与えるのも投資ですけど、健康にも投資です」

終業後社員が向かったのは柔道場?

こちらは府中市で、プラスチックの成形加工を主力としている企業ヒロボーです。営業や総務部門が入る本社「経営本部」では社員がデスクワークにいそしんでいます。

午後4時45分、終業を知らせるチャイムが鳴ると、社員たちは帰り支度をすることなく、どこかへ向かって行きます。

会社で柔道…!?

ヒロボーでは、社員同士が親睦を図り、人間関係を豊かにするため、およそ4年前から柔道を取り入れました。当初は本社から車で15分程度の武道館を利用していました。

しかし、新型コロナの影響で、借りることが難しくなると、社内の多目的室に畳を敷いて、柔道場にしました。

柔道を取り入れたのは、松坂晃太郎 社長です。柔道二段の腕前ですが、通常とは異なるアプローチから稽古内容を決めています。

ヒロボー 松坂晃太郎 社長
「だからゆっくりでも良いので、相手を押すと頭が下がるタイミングがあるので、その時に上に返す」

稽古は寝技が中心です。ただ、相手を抑え込むのではなく、技を返す寝技を工夫して教えています。

松坂晃太郎 社長
「相手の息づかいだったり、そういった肌の密着した感じというので、お互いの思いがよく分かる。普通のスポーツと違って親睦の度合いが短い時間でできるのが特徴」

稽古は週4日、40分ほど行われます。見ていて、きつそうですが…

社員
「(柔道を始める)前は夜とか家に帰ったらぐったりしていたんですけど、全然、今はもうピンピンです。疲れをあまり感じなくなりました」

松坂晃太郎 社長
「体の健康っていうのは、やっぱり心とつながっていまして、触れ合いっていうのは心に良いんですね。心が落ち着いて整うと、体の方も良くなってくる」

真剣な稽古の中にほころぶ笑顔が健康であることの大切さを教えてくれます…。「企業は人なり」。健康経営を通じて、そんな言葉が聞こえてきそうです。

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