U-16代表の指揮官も熱視線。駒澤大高の9大会ぶりインハイ出場に貢献した2年生ストライカー岩井優太とは何者か

ボールタッチが柔らかく、ゴール前の嗅覚も鋭い。亀田雄人監督が「彼はスマートにできるタイプ」と評するように賢さもある。まだまだ荒削りでフィジカルやメンタリティに課題は見えるが、伸びしろは無限大だ。

6月15日、インターハイの東京都予選の準決勝が行なわれ、駒澤大高が國學院久我山に1-0で勝利して、9大会ぶり2度目の出場を決めた。

激闘を制し、歓喜の瞬間を迎えた駒澤大高で存在感を示した選手がいる。背番号9を背負うFW岩井優太(2年)だ。

3-4-2-1の最前線に入ったストライカーはボールをうまく収めつつ、積極的にゴールを狙って相手の脅威となった。22分にはFW内田龍伊(3年)のラストパスをペナルティエリア内左で受けると、相手DFを外して右足を振り抜く。股を抜いたシュートは相手GKに阻まれたが、冷静かつアイデアに富んだフィニッシュだった。

後半は途中からシャドーに回り、代わって最前線に入ったFW岸本空(3年)をサポートしながら、アグレッシブなプレーで攻撃陣を牽引。0-0で迎えた最終盤の77分にはMF矢島礼偉(3年)のFKにファーサイドで反応し、頭で中央に折り返す。岸本の決勝点をアシストし、チームに夏の全国行きをもたらした。

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岩井は小学校5年生の時に親の仕事の関係で北九州に移り住み、中学では県内の強豪校として知られていた思永中のサッカー部に所属。FWのレギュラーとしてプレーし、1年次には第34回九州中学校U-14サッカー大会に出場する。

その後は2年次に福岡県選抜に選出されるなど、右肩上がりで成長を続けた。だが、3年生に進級したタイミングで、元々住んでいた東京に再び移住。「東京のサッカー事情に詳しくなかった」という理由で、通っていた港区立港南中のサッカー部でプレーを続けた。

ただ、決してレベルが高いわけではなく、同学年の仲間は5、6人しかいない環境でチームも最後の夏は地区予選で早々に敗退。アピールする機会に恵まれず、そのなかで文武両道を目ざして駒澤大高への進学を決めた。

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高校では徐々に頭角を現し、1年生チームでプレーした昨季は関東ルーキーリーグC(3部相当)で大活躍。大会MVP、得点王に加え、非公式ながらアシストでもリーグトップだったという。個人3冠を果たしたことで確かな手応えを掴んだ。

「技術的な向上はもちろんあるけど、2年生になって責任感も芽生えた。ただプレーするだけではなく、絶対にやらないといけない想いを持ちながらも、冷静に振る舞えるようになった。そうした意味ではルーキーリーグでチームが優勝して、自分もタイトルを掴めたので自信を得られたのは大きかったと思う」

そして、迎えた今季はトップチームに引き上げられ、今予選の途中からスタメンに定着してゴールを重ねていった。その活躍は代表スタッフの目にも留まっており、國學院久我山との準決勝にはU-16日本代表の廣山望監督が来場。岩井は早生まれで来年開催されるU-17ワールドカップの出場資格を有しており、可能性は十分にある。

現状ですぐに代表で活躍するのは難しいが、身体ができ上がり、さらに高いレベルで経験を積めれば飛躍しても不思議ではない。

まずは今夏に開催されるインターハイで活躍できるかがポイントとなる。普段は東京都1部リーグでプレーしており、県外の強豪校と戦う機会はない。自身初となる全国の舞台でどこまで自分のプレーが通用するのか。

「一番、神村学園と対戦したい。中学時代に名和田我空と戦って敗れているので、リベンジをするならこの代しかない」とは岩井の言葉。駒澤大高の背番号9から今後も目が離せない。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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