「老々介護」で精神的にも肉体的にも負担が重なった妻は… 広島・死体遺棄事件から1週間

広島県江田島市の住宅で夫の遺体を遺棄したとして76歳の妻が逮捕された事件が発生して1週間が経ちました。事件の背景には高齢者が高齢者を介護するいわゆる「老々介護」がありました。

江田島市沖見町美能地区。海と山に囲まれたこの場所で事件は起きました。

6月10日、和田道則さん74歳の遺体を自宅の1階の部屋に遺棄したとして、妻で、76歳の和田澄子容疑者が逮捕されました。

警察によりますと、道則さんの遺体は9日午後、刃物で刺された複数の傷を負った状態で発見。施錠された1階の別の部屋に切り傷を負った澄子容疑者が倒れていて、近くには刃物が落ちていたといいます。

佐藤勇希 記者
「遺体が見つかったこの建物で、かつて和田さん夫婦はペンションを営んでいました。規制線が張られている玄関は花や置物で飾り付けられています。」

亡くなった道則さんについて近所の人は「仕事一筋の熱心な方だった」、「つい最近まで買い物に出る姿を見ていた」といいます。

しかし、夫妻をよく知る人によると、道則さんが認知症を患ったことをきっかけに状況は一変。ペンションの経営をやめ、道則さんを澄子容疑者が介護する生活が続きました。いわゆる「老々介護」です。

佐藤勇希 記者
「県内の他の自治体と比べて高齢化が進む江田島市。なかでもここ美能地区の高齢化率は52%と特に高い数字になっているとのことです。」

江田島市によりますと、要介護認定を受けた市民の介護ヘルパーの利用率は22.7%に留まっていて、今回の事件のような夫婦間の老々介護も少なくないとみられています。

江田島市民
「大変。すぐには施設に入れないので自宅でどうやって見ていくのかなと思います」

江田島市民
「お互いの体力が衰えてる分、若い子とかと比べるとお互いが精神も体力も限界迎えちゃうんじゃないかなと言う印象があります」

夫妻をよく知る人によると、澄子容疑者の精神的・肉体的な負担は大きく、先月末に知人に今後の介護の仕方について相談していたといいます。

警察は道則さんが亡くなったいきさつを澄子容疑者が知っているとみて調べています。

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