世界的にも人材獲得競争が激化…中小企業の頼みの綱「外国人労働者」法改正が“選ばれる日本”への試金石に

製造業が盛んな富山県では外国人が日本で学んだ技術を母国に持ち帰る技能実習生の受け入れが積極的に行われてきましたが、その制度に代わり外国人を労働者として国内に迎え入れる制度が3年後から始まる見通しです。
人口減少で企業の人手不足が深刻化する中、外国人労働者の確保につながるのでしょうか。
県内企業に現状と課題を聞きました。

今月14日、技能実習制度にかわって新たに「育成就労制度」を設ける法律が参議院本会議で可決、成立しました。

現在の技能実習制度では、同じ業種で職場を変更する「転籍」が、原則、認められず、厳しい労働環境で失踪する実習生が相次ぐなど問題が指摘されてきました。

新たな育成就労制度では、在留期間がこれまでの最長5年から3年に短くなる一方、転籍を条件つきで認めるなどの改善が行われ、熟練した技能を持つとみなされる「特定技能2号」を取得すれば永住も可能となります。

法律の目的は、少子化により労働力の減少が進む中、外国人の就労を通じて担い手が不足する産業の労働者を確保することで、改正法は3年後の2027年までに施行される見通しです。

現在、富山県内で暮らす外国人は2万人あまり。
その在留資格で、永住者に次いで多いのが技能実習です。

ベトナム人技能実習生の受け入れをサポートするコンサルタント、ダンさん。
ベトナムでは日本で働きたいと考える人が依然、多いものの、外国人労働者を確保する世界各国の競争も年々、激化しているといいます。

*dandan グェン タン ダン代表
「実際私がベトナムに行って、これから日本に行こうとしている人たちの話を聞くと、まだ日本に行きたいという人はたくさんいる。受け入れる側もしっかり受け入れる体制や魅力を見せていかないと、韓国や台湾、オーストラリアの市場に人材が流れていくと思っている」

そうした状況を受け、より良い待遇で外国人労働者を迎え入れようと取り組みを進める企業が県内にもあります。

富山市のエレベーター製造会社、フレンドリー・エレバテック。
2007年から外国人の雇用をはじめ、現在、従業員33人のうち10人が外国人労働者です。

それぞれ母国で大学を卒業したベトナム人のアインさんとミャンマー人のアウンさんは、エンジニアとして制御盤の配線の点検作業などを任されています。

*ミャンマー出身 アウンさん
「日本人と働いて、技術を勉強したいと思った」

*ベトナム出身 アインさん
「仕事がおもしろく、生活が楽しい。将来は日本に住むつもり」

能力もやる気もある外国人労働者。
その雇用に力を入れる背景には、中小企業なりの人材確保の難しさがありました。

*フレンドリー・エレバテック 大澤恒寛社長
「小さな会社だと、なかなか日本人の優秀な人材に選んでもらうことが難しい。ハローワークや求職雑誌に求人を出しても、ほとんど応募がない状況。企業としては人材を確保しないと生き残れない。その中で外国人材は必要だということで、外国人にしっかり働いてもらえるように一生懸命取り組んでいるところ」

この企業では、以前から技能実習生を受け入れてきましたが、より良い待遇で長く働いてもらえるよう、特定技能への移行を勧めたり、エンジニアとしての採用を増やすように方針をシフトしてきたと言います。

*フレンドリー・エレバテック 大澤恒寛社長
「3年または5年技能実習生でやってきた人材は、経験値をある程度培っている。その人達をさらに長い間雇用するためには特定技能ということになる。外国人材を安く使うという考え方を捨てないといけない。日本人と同様に給料を払う」

そうした企業努力で確保した外国人労働者も、永住が可能となる資格、「特定技能2号」の取得が困難なため定着は難しいのが現状です。

しかし、その点の規制緩和は改正法に盛り込まれていません。

*フレンドリー・エレバテック 大澤恒寛社長
「技能実習生から特定技能1号、2号にいけば半永久的に私たちの会社にいることができるが、1号から2号に上がるハードルがすごく高い状況で、試験内容もすごく難しい。技能実習の5年間と特定技能の5年間の10年富山に住んで仕事をしているわけなので、富山のこと、ルールもよくわかっている。企業の技術を持っているのに、最終的には、これ以上、試験を合格しないと日本にいることはできないので、その部分には緩和をしてあげないと、富山にずっと残るということは難しくなってくる」

今回の法改正が外国人労働者の確保にどうつながるか。
世界的な人材獲得競争が激化するなか、選ばれる日本、そして富山となるかどうかの試金石となりそうです。

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