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「何とか1-0のまま新に繋げたかったです。自分で(試合から)出るときに追いつかれちゃったんで、そこはちょっと悔やまれます」
アルビレックス新潟との試合後にこう唇をかみ締めたのは川崎フロンターレの小林悠だ。当初の予定より長い出場時間となった小林の戦う姿勢について筆者が話を振ると、自身のプレーを誇るのではなく、山田新にリードした状態でゲームを渡せなかったことを悔やんだのだ。
久々の試合出場となった小林は、もともと45分か60分の出場を見込んでいた。そして、その交代する相手は山田新。しかし、小林は実際には66分間プレーした。そして、その交代直前の61分にフロンターレは同点弾を決められている。
ピッチに座り込んで交代を要求した小林だが、けっして負傷などではない。久々の試合出場で、足の複数個所をつってしまったからだ。
鬼木達監督が当初の予定よりも時間を伸ばしたのは、攻撃面での手応えもあったからだろう。「シュート場面もチャンスもけっこう作れてましたし、前回、神戸戦で(シュート数が)少なかったっていうのはみんな分かってたので、攻撃的にっていう姿勢は見せられた」と小林が振り返るように、闘志をしっかり出してゴールに迫っていた。
■「あいつがこれからのフロンターレを引っ張っていってほしい」
試合経過はご存じの通りだ。1-1のまま後半アディショナルタイムに突入すると、新潟が90+7分に逆転弾を決める。ホームチームが劇的な勝利を手にするかと思われたが、山田新が90+11分に同点弾を叩き込む。
先述したようにリードした状態で山田に渡せなかったと悔やんだ小林に、背番号20の劇的なゴールについて聞くと、一瞬で笑顔になった。その笑顔は、その結果一つに対するものではなく、これから見るであろう大きなものへの期待感から来るものだということは、発せられる言葉から分かった。
「(交代時、)“絶対に決めてこい”って新に言いましたし、こういう試合で決めることであいつはどんどん成長していける」
そう話す小林は、「自分は若いとき、すごくそういうところがあった」と自身の成長に山田の姿を重ね合わせる。本当に必要な場面で得点を取ることで、選手として大きく成長できるというのだ。
そして、こうも言う。
「あいつがこれからのフロンターレをどんどん引っ張っていってほしい」
これだけ期待を隠さないのも、すでにその一端を披露しているから。小林はさらに、「結果をしっかり残してるんで、これからもっともっと取ってくれる」とも続けた。
2―2という結果だけで喜んでいいものではない。しかし、その裏側で選手は闘志をピッチで表現しようとそれぞれの動きを見せていた。そして、それがこれからにつながる実感を手にしている。
ここから始まる連戦で、その闘志をさらに高められるはず。大きな期待を、新潟の地で手にした。
(取材・文/中地拓也)