原爆資料館 観光客向け地図がリニューアル 長崎工業高生が作製

県立長崎工業高の生徒がデザインした新しい地図

 長崎市平野町の長崎原爆資料館で配布している観光客向けの地図が6月、刷新された。デザインは、県立長崎工業高インテリア科の生徒4人(2019年度に卒業)が担当。同館を中心に、周辺の被爆遺構を巡りやすい地図を作ろうと、新たに遺構などのイラストを追加。専門知識も生かして、赤や緑など、色の違いを判別しづらい特徴を持つ人のために、万人に見やすいオレンジ色に統一した。
 刷新は、同高の教諭で10年ほど前から「平和案内人」として同館を案内する今泉宏さん(58)の提案がきっかけ。県外の来館者から、駐車場や被爆遺構の場所などを尋ねられることが多かったため、生徒のノウハウを生かして新たな地図の作製を思い付いた。
 同高によると、前身に当たる県立長崎工業学校では原爆により学校や動員先の工場、自宅で教職員22人、生徒209人が犠牲になった。爆心地近くの松山町で建物の解体作業をしていた建築科の1年生は全員亡くなった。
 地図作製は被爆の歴史を学び、長崎の平和活動に貢献してもらおうと、2019年4月に今泉教諭が同館の指定管理者に提案。同年、夏ごろから当時3年生だったインテリア科生徒4人が作製を始めた。
 地図は日本語と英語で、同館周辺にある国指定史跡「長崎原爆遺跡」を中心に、城山小学校や浦上天主堂など12カ所をイラストで示した。写真をパソコンのソフトを使って丁寧になぞり、色をつけてイラストにした。
 試作品が出来上がると、現地で確認。駐車場や道路の場所などを一つずつ確認した。バス通りなど主要な道路を太くして、歩きながら見やすい地図を意識。全ての要素を詰め込むのではなく、電停や駐車場、トイレ、コンビニエンスストアなど、観光客に必要な情報を厳選し、20年2月下旬に完成した。
 作製した生徒は「誰もが見やすいと思える地図を作る大変さを実感した。この活動を今後の生活で生かしたい」と振り返った。今泉教諭は「長崎の平和について考えるきっかけにし、『社会に貢献できた』という自信にしてほしい」、生徒を指導した同科の松尾陽平教諭(34)は「学んだことをどう生かしたらいいか、分からない生徒も多い。学びを実践して、(生徒の)やりがいにつなげられた」と話した。

地図製作を振り返る今泉教諭(右)と松尾教諭=長崎市岩屋町、県立長崎工業高

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