貯金100万以下。住宅ローンと私立高校の学費を払うには妻がパートのままだと厳しい?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、36歳、パートの女性。35歳の正社員の夫と5歳のお子様と暮らす相談者。相談者がパートのままでも住宅ローンの返済や学費を支払うことはできるでしょうか? FPの高山一惠氏がお答えします。

8年後の住宅補助が切れるタイミングで、マイホームを持つ夢があります。

恥ずかしながら、今まで家計を任されていたにもかかわらず、貯金が全くできておらず、子どもが幼稚園から保育園に移った今年の4月から本格的に家計を見直し、あまり使用していなかった車を手放したり、保険を見直したり、自分もパートで働けるようになって、やっと貯金ができるようになりました。今のところ毎月10万円と、ボーナスの一部を貯金に回しています。

このまま順調に行けば、8年後には1,360万貯まる計算ですが、マイホーム購入後の返済額と老後に備えての貯金が出来るかどうか不安があります。

子どもは1人で、今後も増える予定はありません。本人が望めば、高校からくらいなら私立に行かせてあげることも考えています。

子どもの大学資金については、18歳になる時満期を迎えている主人の生命保険が二つあります。一つは360万円がおりるもので、払い込みはあと5年(給料天引き)。もう一つは450万円おりるもので、31万円年額一括払い、払い込みはあと11年です。後者は使わずに60歳まで保険で持っていて、600万になった時に解約するか迷っています。

私自身もマイホーム購入後は正社員になりたいと思っていますが、年齢的に採用されるかどうか不安もあり、このままパートでも生活が成り立つのか、余裕はあるのかなど知りたいです。

主人は年収額面650万円くらいなのですが、天引きが多いためか、現状私のパート代が貯金のほとんどを占めています。主人の今後の年収は上がっても700万円くらいと言われており、生活が苦しくなるのであれば今すぐにでも正社員も考えねばなりません。

夫婦ともども両親は自立しており、それぞれ財産がありますので介護の心配はしていません。

是非、より良いライフマネープランをご教示ください。

【相談者プロフィール】

・女性、36歳、パート、既婚

・同居家族について:

私/パート、月収手取り9万、賞与・退職金なし

夫(35歳)/正社員、月収手取り26万2,000円

(住宅補助7万円+実費2万8,000円、保険料1万5,000円天引き後)、

賞与年額手取り110万、退職金は少なくとも2,000万円

子ども/5歳

・住居の形態:賃貸(大阪府)

・毎月の世帯の手取り金額:35万2,000円

・年間の世帯の手取りボーナス額:110万円

・毎月の世帯の支出の目安:24万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:0円(給料天引き)

・食費:6万円

・水道光熱費:1万5,000円(夏、冬のピーク時はさらに1万円)

・教育費:6,000円

・保険料:1万円

・通信費:1万3,000円(家のインターネット回線含む)

・お小遣い:夫4万円、妻3万円

・その他:交際費1万5,000円、被服費2万、趣味・娯楽2万5,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:10万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:50万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):60万円

・現在の投資総額:つみたてNISA 10万円(今年開始)

・現在の負債(奨学金の返済):夫残り3年(月1万5,000円)、

妻残り2年(月1万5,000円)


高山:ご相談ありがとうございます。8年後にマイホームの購入をご希望とのこと。これを機に、今後の家計の状況や老後資金などに不安をお持ちになっているようですね。マイホーム購入後も奥様がパートタイマーで働き続けることとして、家計の状況がどうなるのかを見ていきましょう。

住宅ローン借入額は年収の5〜6倍を目安に

会社からの住宅補助が切れる8年後にマイホームの購入を希望されているとのことですが、まずは、どれくらいの金額の物件を購入したいのか予算を決めることが大切です。

とはいえ、我が家の収入ならいくらの物件を購入するのが現実的なのか、いまいちわからないという方は少なくありません。そこで、収入に見合った借入金の金額や、毎月のローンの返済額の目安をお話します。

住宅ローンの借入金の上限は、年収の8〜9倍になることが一般的です。しかし、長期間にわたって無理なく返済することを考えると、上限の満額を借りるのは得策ではありません。住宅ローンの借入金は、年収の5倍ほどに設定するのが理想的だと言われています。とはいえ、首都圏では物件価格が高く、年収の5倍ほどの借入金ではマイホームを購入できないケースも少なくありません。そのような場合は、借入金の目安は年収の6倍程度になります。

毎月の返済額はどれくらいが理想?

では、毎月の住宅ローンの返済額はどのように決めたら良いのでしょうか。一般的に住居費用は、手取り金額の25%以内に収めるのが理想といわれていますが、都心部など、エリアによっては価格が高いので、30%以内までは許容範囲です。

住宅を購入する予定である8年後には、住宅補助がなくなるとのこと。実費分が2万8,000円、5年後に払込終了予定の保険料が1万5,000円あり、いずれも給与天引きなので、8年後のご主人の毎月の手取り金額は、30万5,000円程度になりますね。奥様のパート代も合わせると、世帯での手取り金額は39万5,000円。手取り金額の25%は月9万8,750円、手取り金額の30%は月11万8,500円となります。

ちなみに、マンションを購入する場合、管理費や修繕積立費も毎月の支払いに加算されます。新築マンションなら毎月1万5,000円〜2万円、中古マンションならさらに高額になるのが一般的です。上記の目安にはこれらの金額も含めて計算しましょう。

頭金の払い過ぎに注意

また、物件を購入する際には、頭金の払い過ぎにも気をつけないといけません。預貯金が手元になくなると、急な支出や減収などが起きた際、生活が成り立たなくなる危険性もあるからです。生活費の半年から1年分の預貯金は確保しておきましょう。このままの貯蓄ペースを維持できれば、8年後に1,360万円貯まるとのことですが、できれば、生活費の1年分に加えてプラスアフファの金額は手元に残したいもの。

他にも家の購入には、物件の代金以外にも諸費用がかかります。たとえば、司法書士や銀行に支払う手数料、書類の印紙税、不動産登記に必要な登録免許税など。その総額は、新築物件だと物件価格の4〜5%、中古物件だと物件価格の7〜8%にも上ります。最近は諸費用込みでローンを組める銀行も増えていますが、金利による支出も大きくなってしまうので、諸費用は頭金と一緒にあらかじめ用意しておくのが理想的です。

65歳までに完済するとして、月の支払いは?

ローンの返済は、一般的な定年退職と言われる65歳までには終わらせたいですね。となると、8年後に家を購入するとしてご主人は、43歳ですので、ローンの期間は22年となります。

仮に住宅ローンの借入金の理想の目安である年収(ご主人の年収650万円)の5倍の3,250万円を金利1%で22年間借りたとすると、毎月の返済金額は、約13万7,000円。ローンの返済額は世帯の手取り金額(夫婦合わせた手取り金額)の34%となります。

ちなみに、2,500万円を金利1%で22年間借りたとすると、ローンの返済額は約10万5,000円となり、世帯の手取り金額の26%となります。現在は、実質2万8,000円が住居費用ですから、住宅費用で約7万円の負担増になるわけです。

ボーナス払いの併用については、個人的にはお勧めしません。というのも、コロナ禍で業績不振となり、ボーナスが大幅に減額になったり、ボーナス自体がなくなったりして、支払いに苦労されている方が少なくないからです。先行き不透明な時代には、毎月の収入で支払えるかどうかを基準に考えることをお勧めします。

今後のライフプランや貯蓄状況などを見ると、物件価格は3,000〜3,500万円に抑えると良いと思いますが、上記の試算を参考に物件価格や頭金の金額などを考えてみてください。

子どもの教育費はどれくらいかかる?

ご相談者さんは、お子さんが希望すれば、高校から私立に通わせてあげたいと考えているようですね。仮に、小学、中学は公立、高校、大学は私立として教育費を見てみましょう。

文部科学省の子供の学習費調査(平成30年)を見ると、学校教育費、給食費、学校外活動費も含めて1年間にかかる費用は公立小学校の場合、約32万円、公立中学校の場合、約48万円。つまり、小学、中学と子どもが公立に通う場合には、家計から教育費として月額3万〜4万円程度の支出が目安になります。

私立高校の場合は、1年間にかかる費用は約96万円。家計から教育費として月額8万円程度の支出が目安になります。ただし、一定の条件を満たせば、私立高校、公立高校どちらに進学する場合でも助成制度があります。

私立に通わせられるかどうか

教育費準備の考え方として、子どもが高校を卒業するまでの学費は家計からやりくりし、大学の学費は、子どもが18歳になるまでに、300〜500万円を準備するというのが基本です。

つまり、子どもが私立高校に通う場合には、大学の資金のために貯蓄しつつ、家計から教育費として月額8万円程度を捻出することができるかどうかが私立に通うことができるかどうかの目安になります。大学の資金については、すでに保険で準備されているようで、払込もあと5年とのこと。家の購入の前に360万円は準備できそうですね。

3年以内には、ご夫婦の奨学金の返済が終了する予定のようですから、小学、中学までの費用は、家計から捻出できそうですが、家の購入以降は、毎月貯蓄できる余裕はなさそうです。高校の費用ですが、11年後に満期になる貯蓄型の保険があり、450万円あるとのことですから、そちらを学費に充てれば、私立に行ったとしても費用は捻出できそうです。

老後資金はいくら必要?

住宅費用、教育費用のイメージができたところで、今度はご夫婦の老後のお金が気になるところですね。

老後までにどれくらいお金を準備しておいたら良いのかですが、参考までに現在すでにリタイア生活を送っている人の平均的な家計をみてみます。リタイア世帯の生活費は、夫婦の場合で約23万7,659円(総務省「家計調査」2019年)。もらえる公的年金の平均額などと相殺すると約3万3,000円の“赤字”になります。

90歳まで生きると仮定すると、毎月約3万3,000円を26年間貯蓄から取り崩すことになるので、約1,030万円程度足りません。高齢になると病気や介護状態になる可能性も高いため、このお金に加えて、医療費、介護費用として1人あたり500万円程度を準備しておきたいところです。そうすると、リタイアするまでに夫婦で最低,2000万円は貯めておきたいところです。

ただし、上記のデータは、衣食住の基本生活かつ、持ち家を前提にした費用です。旅行に行ったり、高級レストランで食事をしたり、孫にお小遣いをあげたりと、いわゆる、「ゆとりある老後」を送るためには、夫婦2人合わせて35〜36万円が必要といわれています。

ですから、どんな老後を送りたいのかによって、必要になるお金は変わってくるわけです。

「特別費」を考慮することも忘れずに

ご相談者さんの場合、お子さんの教育資金については、毎月の家計と貯蓄型保険から賄えそうですので、住宅購入後もボーナスを貯蓄する余裕がありそうです。仮に住宅購入後も60歳まで毎年ボーナスを50万円ずつ貯蓄することができれば、800〜900万円は貯蓄できそうです。また、ご主人の退職金が2,000万円程度は支払われるようですので、ご主人の退職までに住宅ローンが返済できれば、退職金の2,000万円は老後の資金に充てることができます。

試算上は、基本生活を送る分には問題ない老後資金が貯まりそうですが、老後も家具・家電の買い替え費用や家の修繕費用など、何かと「特別支出」が発生します。特別支出の例としては、「家具・家電の買い替え」「固定資産税」「住民税」「家のリフォーム代」「レジャー費」「冠婚葬祭費」「子どもの結婚資金の援助」「孫への援助費用」などがあります。これらの費用なども考慮しておきましょう。

ボーナスに頼らなくても貯蓄できる家計づくりを

ただし、住宅購入のところでもお話したように、ボーナス頼りの貯蓄計画だと、ボーナスが大幅に減ってしまった場合などは軌道修正する必要がでてきます。ですから、毎月家計から少しずつでも老後に向けて積み立てをしたいもの。中長期的に安定的にお金を増やしていくためには、「投資信託積立」が有効です。

今年からつみたてNISAを始めたとのことですが、仮に毎月1万円を4%の利回りの投資信託で30年間積み立てることができれば、約694万円になります。金融庁の資料によると、国内外の株、債券に20年間(1995年から2015年)分散投資した場合、平均利回りは4%程度とのこと。バランスファンドなどを活用して国際分散投資を心がければ、4%程度の利回りで運用できる可能性は高いでしょう。

妻はパートのままでも大丈夫?

今回は、ご希望の住宅価格などがわからなかったので、一般的な考え方に基づき試算してみました。住宅購入後は、住宅費用が増えたり、教育費が増えたりすることを考えると、月々貯蓄する余裕がなくなるため、ゆとりある生活を送るためには、奥様が正社員となり収入を増やすという選択も検討してみると良いですね。ただし、奥様がパートのままでも、ご主人の退職金制度やボーナスの状況が継続されれば、老後までの資金も準備できるでしょう。

今回のアドバイスが住宅購入価格や教育プラン、今後の働き方を考える上で、ご参考になれば幸いです。

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